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第4章


「…で、攻略出来る範囲まで行って、日が暮れてきたから戻ってきたと。」
船長の言葉通りに、マツリ達は時間を考え早めに引き上げて船長とノイに合流、そして今海賊船に帰ってきた。
「分かる範囲で宝石らしい物は見て持ってきたのですが…。」
「う~ん、残念ながら全部外れだな。」
伝説に記されていた4つの宝石のヒントは名前のみらしいが、船長はキッパリと告げる。
「勿論、高価な物が多い…が、お前らの話とこの取ってきた宝石や装飾品を見ると、おそらくあの地下通路は、古代遺跡を改造したどこかの貴族の宝物庫だろう。」
「そこまで分かるんですか?」
見てみろよ、と指差しをされ、その方向を見てみると、サナやメソドがルーペを持ち宝石をじっくりと観察していた。
「宝石単体には何も書いていないけれど…ティアラやネックレスには、しっかりとご記名されているわね。」
「しかも、全部同じ名前だ…名のある貴族の持ち物らしい。」
大人達2人の言葉に「へぇ…。」と素直に感心するマツリは、また船長へ言葉を投げる。
「それで…この金品達は?」

「いや、貰うよ?」

何てことの無い顔をするので思わず「えぇ!?」と少女は大声を出してしまう。
「目的の物は無かったんじゃ…。」
「無いけど、これだけ立派な物が収穫出来たんだ、貰わなきゃ勿体ないだろ?…もし何かあった時の為の資産は取っておかねぇと~。」
「ぬ、盗み…では??」
船長以外にも目を向けて意見を募ろうと思うも、宝石を見ている2人は全く意に介さず目の前の作業に集中していて、後ろにいる絵本を読んでいるであろうガーナに視線で訴えるも届かずどうしようと考えを巡らせるも。
「…諦めろ。」
後ろからやって来たノイに肩を軽く叩かれる。
「貴族様は両手じゃ足りねぇくらいの宝を持っているから、これくらいは痛くも痒くも無い、罠張って破かれた方が悪い、取ったモン勝ち…大方、この言葉が返ってくるだけだ。」
「えぇ…。」
思わず困惑がそのまま声に出てしまうも、上からまた別の声が降ってきた。
「いや、そもそもお前も盗みみたいな事やってたろ。」
「…まぁ、それはそうだけど。」
何にしてもだな、と船長からマツリへ言葉を掛けられる。

「海賊ってぇのは…宝に弱いモンなんだよ!」

大人なのか本当に疑わしい程に、まさしくガキ大将のような笑みを見せられ、マツリは返答することも忘れてしまう。
「まぁ、全部盗るよりは可愛いもんだ…さて、いつ貴族様の追っ手が来るか分からねぇし、船出す準備するぞ!」
その掛け声で手の空いている船員達が動く中、マツリも動きながら胸中で呟く。

(今なら、海賊に入る前に止めとけって言ったメソドさんの気持ち…分かる気がする。)

賊になるということはこういう事なのだと。
「…次の宝探しの時は慎重に見ないとダメだなぁ。」
人生は綺麗事ばかりでは生きられない、醜い事にも向き合って生きて行かなければいけない、そう身に染みついて理解してきたつもりだったが、自分はまだまだ勉強不足だなぁ…と思い彼女の口からは溜息が零れたのだった。
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