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第4章


目を開けられなかった。
そこに広がる惨状を見たくない、そう思ってしまったから。

両目どころか額のミツメまで覆うように両手を顔に包んでいるマツリを、隣にいるサナは「マツリちゃん。」と声を掛ける。
「目を開けて、真実を見つめる事も大切な事よ。」
「で、でも」
「開けて。」
優しいその口調とはそぐわない命令のような且つ、願うようなその言葉に恐る恐る少女はその両手を外す。

「…勝手に死んだ扱いしないでくれ。」

ふて腐れたその声が耳に届き、マツリは目を見開いた。
「メソドさん!」
「流石にわたしもハラハラしましたよ。」
無事で何よりです、と告げるサナに「ふん…。」と鼻で返事をするメソドの様子を見て、本当にほぼ無傷である事をマツリは確認する。
「どれぐらいここが放置されているかは分からないけれど、落とし穴の針も投げられたナイフも錆びていて元の切れ味はほぼ保てていない、加えてあの壁の動きも元の物より劣化しているみたいだ…滑り込みすれば間に合うくらいだし………だから、そんなに心配しなくていいのに。」
メソドの視線の先には、緊張から解放されたのかへたり込んで座るマツリの姿があった。
「だ、だって…あんな、早いスピードで…メソドさん走って跳べるなんて…。」
「メソドちゃんの動きはわたし達の中で一番足が速いのよ、身軽さと速さに関しては群を抜いているわね~。」
サナに説明され、さっきの動きと照らし合わせてマツリは納得がいった様子で静かに頷く。
「…で、この扉にはトラップは仕掛けられていないんだな?」
目の前の扉を指差し尋ねる彼に、少女は口を開いた。
「はい…そのまま進んで下さい!」
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