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第4章


マツリから放たれた一言、それを受けて最初に反応したのはメソドだった。
「…一つ、というと?」
「複数当たりがあるみたいで…けれど、全てがそうじゃなく、開けたら攻撃をする扉もあるみたいです。」
「この先以外の倉庫も見透かせたの?」
サナが目を見開いて聞くも、マツリは首を振る。
「全部じゃないです、近くの所まで…けど、この辺りが倉庫の密集地帯だったので。」
だから小さいけれどあそこの狭い所から入ったんですと彼女は説明し、眼前の道を睨む。
「勿論その分、道は険しいようですが…道順さえ間違えなければこの先は通れるものでしたよ。」
なるほどと呟くと、メソドはその場から一歩踏み出す。
「え…メソドさ」
「大丈夫よ。」
マツリの声に被せるようにサナが声を出した。
「マツリちゃんにも力があるように、彼にも持っているものがあるから。」
ガコリッ、と明らかな足音とは違う音がして、マツリは悲鳴が上がりそうになるも、その光景を見て喉の動きが止まる。
道が割れ眼下には鋭い針が広がっている落とし穴、その上を小柄なその体がまるで飛ぶように舞っていた。
落とし穴の向こう側、そこに辿り着くもすぐにまた別の罠が発動し、襲いかかるように左右の壁から刃物が飛んでくるも、左右のアームカバーの内から短刀を出し、避けられるものは回避し、急所に当たりそうなものは自分で弾く。
「メソドさんッ!」
悲鳴がその場に響くと、すぐにメソドの頭に刃物が掠める。
「…問題無い。」
その言葉通り流血はしていないものの、その歩みが揺らめくのを見て、やはり自分が行くべきだったのではと思い始めるマツリだったが、上から声が降ってきた。
「あれでも、貴方に気を遣っているのよ。」
何のことか分からないマツリはサナに目を移すと、この緊迫した状況にそぐわない表情をしていた。
「船長から事前に昨日捜索していた貴方の様子を聞き出して、能力の負担が体に多く掛からないように、ああやって自分から動いているの。」
元々罠を攻略するのが得意ってこともあるけれど、とまるで子どもがイタズラをするような笑顔で話す。
「信じてあげて、不器用だけど経験豊富な子だから。」
その言葉に応えるように、タンッ!と軽やかな足音がこだまする。
刃の嵐を抜け、最後に体を押しつぶそうと上下から迫ってくる天井と床をくぐり抜けようと彼は低姿勢のまま走りきろうとしていた。

ゴスン…!!

大きな重みのある音が、無情にもその場に広がる。
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