第4章
一度能力をセーブしていた為着けていたバンダナを首元まで下げ、ミツメを起こす。
「やっと出番かぁ、待ちくたびれたぜ!」
「うるさい、力貸せ。」
大人達への対応とは打って変わる冷たい対応にも負けず「これだから年頃の娘はぁ…。」と茶化した言動をする目玉に、マツリの首筋に血管が浮き出ている。
「…まぁ、頼む。」
彼からのオーダーは目の前に敷かれているであろう罠の解析、そしてこの道の先にある倉庫へ行く為罠に掛かること無く歩ける道の発見だ。
両目を閉じて、一度額に意識を集中する。
(ずっと人とは違うこの見えすぎる視界が…疎まれてきたこの目が、こんなに求められるなんて………思わなかったな。)
過去の事が少し過ぎるも、今は目の前の事に集中するべきだ、と思考を切る。
そこから、味覚、触覚、嗅覚、聴覚…視覚以外の感覚を徐々に落とし、更に色のある風景が少しずつ褪せて、物体の骨組みが見透かせる領域へと視界が変わった。
メソドが言っていた通り、自分達の目の前には足を踏み入れると落とし穴が現れるような仕掛けが広がっていて、マツリは心臓が縮む様な気持ちになるも、引き続き見続ける。
罠の先、他にも多種多様な物が仕掛けられているその先を。
「…ふっ。」
少しずつ視覚以外の感覚を取り戻しながら、彼女は一度息を吐く。
「大丈夫?」
汗がぽたぽたと流れている様子を見てサナが持ってきた水をマツリに勧め、ありがとうございますと彼女はそれを受け取る。
「話せる?」
「…っ、はい。」
ごくりと渡されたコップ一杯程の水を飲み干し、口を開いた。
「おそらくですが、ここは当たり…の一つです。」