第四章

安全を確認したのか、雲流丸はあたしの体から出てゆく。その瞬間あたしは体の力が抜けてへたりとその場に座り込んでしまう。
『み、三絵殿!?』
前回憑りついた時にすぐ倒れた事を心配してか雲流丸はすぐにあたしに寄り添ってくれるけど、あたしは自分なんかより先に確認したい事があった。
「林檎…林檎は?」
「無事よ、あんたの方が重症だけどねバカ。」
バシリッとまたおでこに札を貼り、痛い言葉を吐く芽衣も大助さんが離れた様子だった。ちらりと札と前髪の隙間から林檎の様子を窺うと、この部屋に満ちていた陰鬱な空気は取り除かれ、顔は見えないけれど彼女の寝息がはっきりと耳にする事が出来たので、あたしは安心する。
「あ~…良かった。」
『三絵殿…その。』
隣でもじもじしている幽霊が、あたしに声を掛けた。
『勝手な真似をしてすまない、また三絵殿を危険な目に晒す様な事をしてしまった。』
本当にそうだと言う様にジロリと芽衣が雲流丸に向けて責める様な視線を投げる。それでもあたしは…芽衣と同じ気持ちを雲流丸に抱いてはいない。だから、雲流丸を責める事も、謝罪の言葉への返事もしない、ただ。
「あたしの代わりに、林檎を助けてくれてありがとう。」
あたしだけじゃ絶対出来なかった。風羽兄弟の足手まといになっていたのに、雲流丸が来てくれた事でどうにか戦力となったから。この感謝の言葉に、雲流丸は一度信じられない様な表情を浮かべた後、どう答えたら良いのか分からない、何て表したらいいのか相手にも自分も理解できない様な顔になる。じっくりとその返事を待つつもりだったけれど、そこに出てきた聡士さんがそれを止めた。
「話を止めてごめんね、あまり長いと林檎ちゃんのお母さんが心配するといけないから。」
そういえばそうだった、とべりっと札を剥がし、あたしは慌てて林檎を起こさない様部屋を出て、林檎のお母さんに会いに行く。
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