このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

第四章

じり、じり…と二人はあたしから離れ、各自ある程度の距離を保ちながら、林檎の頭と足の近くまで移動する。その二人を警戒してか、大蛇は林檎を覆ってとぐろを巻き守りを強くした。
「行くぞ。」
その声と同時に、芽衣達は札を取り出し、大蛇へ向かう。危険を察知したのか、大蛇から小さな蛇達が出てきて二人に襲い掛かった。
「危な…ッ。」
思わずあたしは声に出してしまうけれど、二人は焦りも顔に出さず、素早く札を出す。
バチィッ!
静電気が強く響く様な音が、耳を打つ。二人を見ると、襲い掛かる数え切れない小さな蛇達を、持っている札で弾いていた。
(あたしが貰った札は、回復の効果がある物だったみたいだけれど…今二人が持っている物は、守りの効果があるって事?)
力が何だとか一切分からないので、見たままの事しか分からない。ただ、蛇の数は多いものの、どれも弾かれ消えているので、このまま蛇の数を減らしていけば勝てるのでは…と見ていると。
『シャー…。』
あたしの存在に気付いたのか、一匹の蛇がこちらに寄ってきた。流石にまずいと思い咄嗟に芽衣がいる方へと逃げようと走り始める、けれど。
『シャア!』
移動する事を察知したのか、逃がさないとばかりに、襲い掛かる蛇。噛まれてしまう、霊である事にも関わらず、そう思ってしまったあたしは目を閉じてしまう、その瞬間。
パチンッ!
憑りつかれる事も無く、噛まれる事も無く、そんな音が聞こえて、あたしは目を開くと、襲おうとした蛇がひっくり返って消えていく様子が見えた。何で何とも無かったのか、ちり…と手で持っていた貰った札が消えていくのが目に入り、あたしは理解する。
(この札が…守ってくれたのか、でも。)
残りの札は、あと四枚。これがすべて無くなれば、あたしの身を守る物は完全に無くなる。更に今前線で戦っている二人も、どこまで持つか分からない。
(本当に…今の状態で勝てるの?)
幽霊退治なんてした事の無いあたしは、ただ不安が強まるばかりだった。それを察したのか、芽衣がちらりとあたしに視線を送る。
「すぐ終わらせるから、待っていなさい。」
いつもの厳しい声とは違う、強いけれどどこか優しさも感じる言葉に一瞬驚くも、あたしは力強く頷く。
(芽衣達も出来る事はしている…あたしも出来ないなりに足を引っ張らない様にしないと…!)
なるべく先程の様に急に蛇に来られても、すぐに助けを求められる位置、芽衣の後ろ側まで移動する。
(あたしじゃ札を出す事しか出来ない…せめて、ここに雲流丸がいてくれたら…。)
病院での出来事を思い出し、つい悔しく思ったその時。
 
『三絵殿!!』
 
聞こえないはずの声が、聞こえた。
8/13ページ
スキ