番外編
「――――――――――ま…こと……真人!」
真人が意識を取り戻したのは、テント中にあるベンチの上だった。
「間一髪でしたなぁ…。」
離れたところから三絵と芽衣は二人の様子を見ていた。
「さずがの芽衣姐さん、お札携帯しているなんてね。」
「うるさいわ。」
「でも、お札持ってたなら巫女衣装の方が良かったんじゃ」
「その口も札で封じようか??」
「すみませんでした。」
真人の視界が真っ白になったというのは、芽衣から渡された札を三絵が真人の目に貼ってできたものだった。
札を貼った直後、真人は気絶、目の前にいた子どもは三絵たちの姿を見るや消えてしまった。
「真人くんが気絶をしたのは…。」
「生気を吸われたからでしょうね。」
芽衣は冷静に起きたことを分析し始めた。
「でも、たぶんあれは人間の生気目的でやったことじゃない。」
「つまり?」
「…呼んでいたみたいね。」
「?」
「年齢的にも幼い子どものように見えた、憶測だけど、一緒にあの世に行ってくれる子を探していたみたいな。」
「そんなものなの…?」
「さっきも言ったけど、お盆みたいなものだから、お盆に水辺に行くと呼ばれるって聞かない?」
「ごめん、初耳。」
「…境界が曖昧になってただでさえ幽霊が集まりやすい水辺に人が来ると引きずり込んで道連れにすることよ。」
「じゃあ…。」
「場所が違ってもやれないことじゃないけどね、あそこは人気のない場所だったし。」
要は寂しいから一緒に死んでくれってことねとさらりとしめた芽衣を見て、三絵は経験の差を実感した。
「まぁ…真人くんが無事で良かったよ。」
係りの人たちにお礼を言って三絵たちは会場を後にした。
三絵と芽衣は、さすがに本当のことは言えずに、人気のないあの場所で寝ていたと皆に伝えた。
「もう、なんでお昼寝していたんだか…。」
「まあまあ、済んだことだし。」
嘘をつくことが苦手な三絵に代わり、芽衣が林檎をなだめた。
生気を吸われて疲れたのか、真人は林檎におんぶをされて背中で寝ていた。
すやすや寝ている真人を見て、三絵は自分が持っていた無料配布のお菓子の詰め合わせを林檎にあげた。
「はい。」
「え?」
「真人くんに。」
「何で!?」
驚いて返事をされ、三絵は気まずそうに言った。
「だって、二手に分かれなかったらこんな事にならなかっただろうし…。」
「「………。」」
それを聞いた林檎と芽衣は顔を見合わせた。
芽衣はイラついた表情をし、対して林檎はふわりと笑った。
「三絵ちゃん。」
「…はい。」
「ちょっとこっち向いて。」
「…?」
言われた通りに三絵は林檎の方へ顔を向けた。
「はい、お仕置き~。」
「痛っ!?」
左頬を引っ張られた。
「本当は両方やりたいけど、真人おぶっているからこっちだけね。」
「じゃあ、あたしは反対をやる。」
「芽衣ひゃん!?」
「あっ、ありがとう!」
「いやいや、おくぁしイタタタタ!!」
三絵の両頬が程よく赤くなると、二人は口を開いた。
「三絵ちゃんは、責任を感じすぎだよね。」
「どっかの政治家もこれくらいだったらいいのに。」
ほんとにねーと何事もなかったかのように会話を始める二人を見て、三絵は呆気にとられた。
「早く、三絵ちゃん!」
「日が暮れるとお母さんがうるさいでしょ。」
話しかけてくる二人を見て、考えることが三絵は馬鹿らしくなる。
「はいはい、行きますよ~。」
その顔に笑みを湛えたまま、彼女は歩き出した。
