番外編


「「林檎!!」」
イベント会場の受付のテントに林檎はいた。
「三絵ちゃん、芽衣ちゃん…。」
今にも泣きそうな表情で林檎は二人を見た。
「大丈夫!?」
「あたしは平気だけど…。」
林檎は心の余裕がないからか、うまく話せないようだった。
「…いい、ゆっくりでいいから、少しずつ話して。」

林檎が言うことには、並んでいる最中にトイレに行きたくなった真人は一人でトイレに行き、そこから行方が分からなくなってしまったということだった。
林檎は防犯機能もあることから、必要最低限の操作を教えて携帯は真人に持たせていた。
三絵と芽衣は二人で真人を探し、林檎には引き続きテントに待っているように言った。
「…ねえ、芽衣。」
人気が少ないところへでて三絵は芽衣に話しかけた。
「さっきの続き?」
「うん。」
「ハロウィンっていうのは、ざっくり言うと日本のお盆みたいな感じ。」
「…先祖が訪ねてくるみたいな?」
「そう、でも同じときに有害な存在も出てくる時期だったから、人間であることを隠して、変装したことが始まり。」
「そうなんだ。」

「つまりは、あの世とこの世の境界が曖昧になる日の一つ。」

「!?」
「さっきの寒気、何度も感じたことあるでしょ。」
「…やっぱり、あれは。」
「いるみたいね、真人くんがそういうことに巻き込まれていないといいけど。」

真人はトイレに行ったあと、自分と同じくらいの幽霊の布を被った子どもに「遊ぼう。」と誘われた。
迷ったが、正直あまり話せなくて寂しい思いをしていたので、少しだけなら良いだろうと誘いに乗った。
「たくさん、遊んだね。」
「そうだね。」
顔は布を被っていて分からないが、誘った子は嬉しそうな声でうなずいた。
少し疲れたが、自分の服のポケットに入っている携帯が光っているのを見て、真人は現実に引き戻された。
「お姉ちゃんたちのところへ戻らなきゃ。」
それを聞くと、誘った子は「えー」と不満そうな声をあげた。
「じゃあ、鬼ごっこして終わろうよ!」
「でも疲れちゃったし…。」
「お願い!!」
「…いいよ。」
必死にお願いをする様子を見て、渋々真人は願いに応じた。
「じゃあ、君が鬼ね。」
そう言って子どもはそのまま後ろに向かって走っていった。
「うん…。」
子どもを追おうとして、真人はここである違和感を覚えた。
(なんだか、足が引っ張られているみたい。)
子どもを追っているつもりなのだが、自分から動いているつもりはなく、勝手に足が動くような感覚に陥った。
「鬼さん、おいで、おいで。」
逃げるつもりなどないような子どもの様子に、真人はだんだん何も感じなくなってきた。
そして――――――

あと一歩子どもにたどり着ける距離で、視界が真っ白に染まった。
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