番外編
三絵は赤い角のついたフードと黒い尻尾のついた悪魔。
芽衣はとんがり帽子と黒色のワンピースに紫色のローブを着た魔女。
林檎はオレンジ色のドレスに透明な蝶々の羽が付いた妖精。
3人はそれぞれハロウィンの仮装をしていた。
ちなみに真人は小さなシルクハットを被り、黒いマントを羽織ったヴァンパイアの格好をしていた。
三絵たちの地域では、広い公園がありそこをイベント会場としてちょっとしたハロウィンイベントが行われている。
今日はそこに真人も含めた4人で行こうと約束していたのだった。
「でも去年や一昨年は皆で行かなかったよね?」
不思議そうな顔で林檎は三絵に聞いてきた。
そう、今回のハロウィンイベントに行きたいと言ったのは三絵だった。
「…林檎さん、あたしたちは今小学何年生ですか?」
「え、4年生。」
「そうだね…。」
と三絵は持っていた小さなバッグからハロウィンイベントの小さなチラシを取り出した。
「ここに割引の情報がある。」
「…?」
チラシを取り出されても分からない様子の林檎を見て三絵は核心を突いた。
「哀しいことに、あたしたちが小学生割引を使えるのはあと数年なんだよ!!」
それを聞いて林檎は一気にシリアスな表情に変化した。
「あのハロウィンイベントは屋台も出店する、そして小学生以下でハロウィンの仮装をしている人は一般値段から半額の値段で屋台が商品を提供してくれる…!」
「そう…だったね!」
「だから、この機会を逃すわけにはいかんのよ、林檎!!」
「うん、三絵ちゃん!!」
互いに手を握り感動を分かち合う二人を、何とも言えない表情をしているお金に困ったことのないお嬢様の芽衣は三絵のペースに引き込まれた姉を見せないように真人の耳を塞ぎ、見えない方向へ体の向きを変えていた。
会場に到着すると、多くの人でにぎわっていた。
「いや~凄い人だね。」
と真人に笑って話しかけたが、真人は林檎の足にしがみつき、顔を隠してしまった。
「ありゃりゃ。」
「ごめんね…。」
眉毛を下げて林檎が謝る。
「いやー真人くんは、恥ずかしがり屋さんだもんね…。」
実際、挨拶以外にまともに会話をしたことが三絵も芽衣もない。
真人はたまに二人とも遊ぶこともあるが、恥ずかしがりに加え無口な子だった。
「内弁慶みたいで…。」
家族だけだとうるさいくらいなんだけどな~と真人の頭を撫でた。
「いいよ、いいよ気にしないで!」
こればっかりはどうしようもないと思って、三絵は別の話題に切り替えた。
「屋台も並んでいる人多いし…二手にわかれて屋台制覇しよっか!」
林檎と真人、三絵と芽衣でわかれてそれぞれ屋台に並んだ。
「三絵。」
「ん、何?」
「あんた、小学生割引とかが目当てじゃないでしょ。」
「………。」
「目的は無料配布のお菓子の詰め合わせでしょ、どうせ。」
「いや、小学生割引も目当ての一つではあるよ。」
あーあとため息をこぼし、見破られていたことに苦笑すると三絵は白状した。
「お供え物がね…ちょっと足りないのよ。」
お供え物というのは、雲流丸にあげるものだった。
三絵は雲流丸にあげているお供え物はたいがいご飯などではなく、お菓子などにしている。
「いや、ご飯もあげてたけど、茶碗に盛って二階の自分の部屋に入るところを母さん見られてにどうしたのって心配されて…。」
三絵の母は心配性である。
「過食症なんじゃないかとか精神的に病んでいるんじゃないかとかうるさく言われてそれからお菓子にしているんだけどね…。」
「…お菓子にしても言われるんじゃないの?」
「いや、自分の部屋でお菓子くらいだったら問題ないっぽい。」
だけどねと三絵は言葉を付け足した。
「量によるね。」
「…あー大体察しがついたわ。」
大量にお菓子を買うとなると、また心配される、しかしお供え物が少ないと雲流丸がまた無自覚に生気を吸ってしまうことが危惧される。
疑われることなくにお菓子を買うには安く多く買うのにセールやイベントしかなかなか機会がなかった。
「…だから、あたしに任せればいいのに。」
「悪い。」
三絵の思いを分かってしまう芽衣は、小さく舌打ちをした。
屋台を周り終えて、三絵と芽衣は待ち合わせの場所で林檎達を待っていた。
しかし、十分待っても一向に来る気配がなかった。
「三絵、携帯は?」
「つながらない。」
3回着信と1つの留守電を入れたが、連絡はなかった。
「林檎、今日携帯忘れたって言ってた?」
「いや、持ってたはず。」
ふと三絵は体に悪寒が走った。
「………?」
「感じた?」
芽衣も同じだったようで、三絵を見てきた。
「三絵はさ、ハロウィンの由来って知ってる?」
「…えっと、分からん。」
「ハロウィンっていうのは――――」
説明を始めようとする芽衣の口を止めたのは、場内アナウンスだった。
『迷子のお知らせです。小さなシルクハットを被り、黒いマントを羽織ったヴァンパイアの格好をした、6歳、夕日真人くん。ご家族様が探しています、お心当たりのある方は――――』
