第三章


『…本当、いい子だな。』
駆け足で家に戻る三絵たちを見ながら大助は呟いた。
『良かったな、あの子が友達で。』
芽衣に笑いかけると、芽衣は顔を真っ赤にしていた。
『…かーわいい。』
「うるさい。」
はぁ…と息を吐き、芽衣はゆっくり顔を下に向けると使用人に「帰る。」と命令をした。
車がすぐに動き出し、芽衣は顔を下に向けたままで話し始めた。
「あんなクサいセリフ言うところは、全く変わっていない…。」
『嬢ちゃん、何かあったのか。』
「3年生の時に、ちょっとね。」
落ち着いてきたのか、芽衣は顔を上げて話を続けた。
「もともと熱血とまでは言わないけど、そんな感じが運動会を境目に急になくなって、こっちはいつでも協力しようとしたのに、勝手に独りで全部背負って…。」
本当、馬鹿みたいと苦々しく呟いた。
『話を聞いてる限りだと、まるでどこかの誰かみたいだな。』
「?」
『勝手に突っ走って、家に上がり込んで一人で解決しようとした誰かだよ。』
「誰の事それ。」
分かり切ってるだろうと言葉には出さず、大助は表情で芽衣に訴える。
『…まあ、友達として、これからどうする?』
「それこそ、分かり切ってる。」
芽衣は即答し、大助は満足そうにうなずいた。

「あれはさすがに強引過ぎない?」
呆れながら、茜は自分の息子である聡士に声を掛けた。
「そうか?」
ことりと首を横に捻り聡士は不思議そうに聞いてきた。
「だが、封場の発展には彼女が必要と感じた。」
「…それ、本人の前では言わないでね。」
でも、そうねぇと茜は少し考えてこう発言した。

「彼女、育てがいがありそうね。」

さも当たり前のように言い放った。
そのことに聡士は疑問を抱くどころか、確かにと賛同した。
「さて、早く帰ってきたということは…。」
「ああ、奴らがそろそろ来る。」
「他の子たちも育てないといけないわねぇ。」
やれやれといった様子で呟く母親を聡士は眼鏡越しに静かに見ていた。

「封場が封場であるが為、この地に居を構えているもの頑張らなくちゃね。」
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