第一章
その夜、あたしは変な夢を見た。
けれど、よくある話で私は翌朝にはすっかり忘れてしまったのだ。
あの目覚めた日から四日過ぎて、点滴の針が取れた。後は退院を待つばかりだけど、もう退院しても大丈夫とお医者さんには言われてるけど、母さんの願いもあって、入院時の当初の予定通りあと一週間で退院することになった。
「…さすがに暇だな。」
看護師さんに言われた図書館や購買をのぞいてみたけどさすがに飽きてしまった。母さんや芽衣たちが見舞いついでに宿題やお土産を持ってきてくれたけど、それでも長続きはしなかった。
(学校にいるときはあんなに登校するの面倒くさかったんだけどな…。)
こういう状況に立つと日常のありがたさが沁みる。
とりあえず、宿題を終わらせたあたしはぶらぶらと病院内を散歩していた。もともとアウトドア派のあたしは室内でじっとしているよりもこうして体を動かしている方が落ち着く。
「…うう。」
だけど
「ああ…痛いよぉ。」
だけど
「助けて…。」
落ち着かない。
そしておかしい。
病院っていうのは、確かに怖い面がどうしてもある場所ではある。でも、こんなにホラーな場所だっけ?
あたしの目には、看護師さん、お医者さん、患者の人達、お見舞いに来た人達…とその他も視えていた。今聴こえていた声は、姿が消えかかっているような人たちが発している声だ。
あたしの目にはこの病院の光景が死者の世界に視えていた。
