第三章


「こんにちは。」

黒髪に眼鏡をかけたほどほどに整った顔、そして風羽家の蝶の家紋がついた着物を着用していたその人は、一目見てすぐに分かった。

(この人が、芽衣のお兄さん…。)

すぐに茜さんの隣に座り、聡士さんはあたしに向かってお辞儀をした。
それに倣ってこっちもぎこちなくお辞儀をする。
「はじめまして、いつも芽衣がお世話になっています。」
「い、いえこちらこそ…。」
「風羽聡士といいます、よろしく。」
「石野原三絵です。」
思っていたよりも普通な人で少し拍子抜けした。
「………。」
聡士さんは隣にいる雲流丸の方へ視線を送っていた。
『あ、あの…。』
「…なるほど、それで家に。」
雲流丸を見て、なぜあたしが家に来たか把握したようだった。
「君は幽霊視えているの?」
「はい…。」
「そんなことより、なんで出てくるのよ。」
不服そうに芽衣が聡士さんに突っかかってきた。
「いや。」
聡士さんは特に気にすることもなく、芽衣の問いかけに答える。
「ただでさえ友人が少ないのに、家に呼んでまで会うお前の友人が気になっただけだ。」
「友達が少ないのはあんたもでしょうが!」
「まあまあ、その辺にして。」
三絵ちゃんが困っているでしょうと茜さんが、その場を治める。
「じゃあ、もう約束の時間になってしまったし、三絵ちゃんを送りましょうか。」
またねとあたしに向かって微笑すると、茜さんは使用人さんを呼んで車の用意をさせた。
「芽衣、大助さん、今日はありがとうね。」
「…別に。」
『また困ったことがあったら聞いてくれよ。』
照れたような顔をする芽衣とニカッという効果音が似合いそうな笑顔を大助さんはこちらに向けてくれた。
「じゃあ雲流丸、行こうか。」
『ああ、失礼した。』
部屋から立ち去ろうと思い、立ち上がった時に聡士さんが話しかけてきた。
「三絵ちゃん。」
「あっ、はい。」
「いきなり変なこと聞くけど、三絵ちゃんは芽衣と同い年だよね?」
「はい、そうですけど…。」
「そうか…。」
少し間を置いて、聡士さんはあたしに告げた。

「もし今付き合っている人がいなかったら、俺と付き合ってくれないかな?」

周りが一瞬にして無音になり、あたしに追い打ちをかけるように言葉が続いた。

「できれば、結婚を前提にした付き合いをお願いしたい。」
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