第三章


「…ふうば?」

何故二回言ったのか意図が分からなくて、あたしはつい聞き返した。
「そうね、まずは何で芽衣が貴方たちを家に呼んだかを説明しなきゃね。」
ちょっと待ってねと言って、茜さんは席を外した。
「…芽衣の家って、改めてすごいね。」
素直な感想を口にしたけど、依然として芽衣は仏頂面のままだった。
「こんなのすごいなんて言わない。」
「…そう?」
「……普通の家に生まれたかった。」
芽衣の様子を見て、大助さんはジェスチャーですまんとあたしに伝えてきた。
すぐに茜さんは帰ってきた。
「ごめんなさいね、お待たせ。」
「あっ、いいえ…。」
茜さんは持ってきた小さなメモ用紙に同じく持ってきたボールペンをすべらせた。
書けた文字をあたしたちの方へ見せてくれた。
「…封場?」
「そう、あたしたちの苗字の元の呼び方。」
「あっ。」
「ちょっと説明が長くなるけど、時間は大丈夫かしら?」
言われて気づき、あたしは慌てて時計を見た。
「一応、6時には帰ってくるように言われました。」
「あら、じゃあ帰りは車で送っていくわ。」
「え、悪いですよ!」
「いいのよ、前病院にお見舞いから帰るときにお母さんに送ってもらったし。」
それにと、茜さんは言葉を足した。
「…このお話、ひょっとしたら今日じゃ足りないと思うから。」
この言葉でそれほどこの話の重要さがよく理解できなかったあたしにも分かったような気がした。

「もともと、私たちの一族は霊的現象を専門的に扱うことができた人が多く生まれたところなの。」
いわゆる霊能者ねと分かりやすく教えてくれた。
「じゃあ、芽衣や茜さんが霊を視ることができるのは…」
「あたしはこの家の生まれじゃないけどね。」
「えっ!?」
『細かいことを言うと、分家だな。』
大助さんが話に入ってきた。
「分家?」
『そう、俺が芽衣の従兄弟だってことは話したよな?』
「うん。」
『俺にとっては、この人は叔母にあたる人なんだ。』
「えっと…。」
『もともと竹田家だったんだが、霊が視えるってことでこっちに嫁入りしてきた人なんだよ。』
「な、なるほ…あれ、大助さんは?」
『視えなかったよ、俺は。』
少し苦笑して、大助さんは話してくれた。
『風羽家がこんなことをやっているとは全く知らなかった、表向きには宗教の分野で活躍している人が多いってことを知っているくらいだった。』
「話が逸れたわね。」
と茜さんが大助さんにじっとりとした視線を送っていた。
『ああ、すんません。』
「まったく…。」
気を取り直して茜さんは話を元に戻した。
「専門家の意見としては、雲流丸さんをこっちに任せてほしいっていうのが本音だけどね。」
そういえば、芽衣も似たようなことを言っていた。
昨日の記憶を思い出し、芽衣の方へ話しかけた。
「昨日言えなかったことは、こういうことなの?」
「………。」
「芽衣。」
無言の芽衣を茜さんは言うように促してくれた。
「…大助が知らないって言っていたように、風羽のやっていることは公にされてない、うかつに話して知られるわけにもいかないし、第一信じてくれないでしょ。」
「だからって、あんな無理やりやらなくても…。」

「あんたが弱っている原因が分かっているのに放っておけるか!」

一喝されて、はっとした。
そういえば、生気を吸われていたことを芽衣に教えられていたことを思い出した。
(近くにいるのに、助ける方法も分かっているのに、どうすればいいのか分からなかったのか。)
今まで話と芽衣の立場と心情を考えると、あたしは―――――

おかしくなった。

「プッ…ハハハ!」

笑い始めたあたしをその場にいる全員があたしを凝視したけどあたしは構わず笑い転げた。
「ちょっ、何がおかしいのよ!?」
「だって、あんまりにも理由が芽衣らしくて…!」
「ハァ?」
「うん、やっぱり芽衣姐さんはツンデレだ。」
「ふざけんな!!」

どうしようもなく不器用で、人に意思を伝えることが苦手で、それでもあたしたちを大事に思ってくれてる。

いつものようにやかましく言い合いが始まった。
話し合いが始まる中で茜さんが小さく呟いている言葉が耳に入った。
「…芽衣は分かってくれる友達ができたのね。」

「すみません、時間取ってもらっているのに…。」
話し合い…というか最早じゃれあいにしばらく時間を取ってしまい、茜さんに謝罪をした。
「いいのよ、あたしも芽衣の友達に会うことを楽しみにしていたところもあるから。」
クスクスと笑う茜さんを見て、少し恥ずかしくなって顔が赤くなった気がした。

「じゃあ次は…そうね、貴方が何故幽霊が視えるようになったかを話しましょうか。」
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