第三章
「三絵ちゃん、おはよう。」
朝、教室に入り真っ先に林檎に挨拶された。
「おはよう。」
「ねえ、三絵ちゃん。」
席に着くと林檎は、少し声を潜めて話しかけてきた。
「何?」
「うん…昨日帰りで別れた後、芽衣ちゃんとケンカでもした?」
今日なんだか機嫌が悪いみたいと、ちらりと自分の席に着いている芽衣を見て林檎は心配そうな表情をした。
…本当、この子は人の感情の変化を敏感に察知できるから凄いと思う。
「いや、ケンカをしたってわけじゃないけど…。」
とっさに嘘は吐けなくて、言葉を濁したあたしを見て林檎はますます心配そうに眉尻を下げたけど、出てきた言葉は優しさの溢れるものだった。
「…あたしは蚊帳の外だったから分からないけど、話したくなったらいつでも言ってね。」
「うん、ありがとう。」
(ごめん林檎…。)
林檎の心遣いが申し訳なくも、嬉しかった。
「めーいーさんっ。」
火に油を注ぐ行為かと思ったけど、いつも通りに芽衣に絡んでみた。
「……何?」
(やっぱり怒ってらっしゃる…。)
「いや、いつも通りの挨拶をと思って。」
「あ、そう。」
「………。」
冷静にしているものの、逆にそれが怖い。
どうしたものかと、瞬時に考えを巡らしたけれどいい答えが見つからなかった。
「…三絵。」
沈黙を破ったのは、意外にも向こうからだった。
「な、何です?」
ついこっちの口調が固くなる。
「…今日、あたし部活休むから、一緒に帰ろう。」
皆まで言わなかったけど、家に行ってもいいという事だろうか。
「うん。」
断る訳もなく、あたしは二つ返事で了解した。
