第三章
草木も眠る丑三つ時、何処かの洞窟で、声が響いた。
「百目鬼(とどめき)!」
甲高い女性と思われる声が洞窟内で反響した。
しかし、その声の主が呼んだとされる人物は返事をしない。
ただ、クチャクチャと気味の悪い咀嚼音だけが、確認できた。
「…もう!!」
数分待っても反応がないのにしびれを切らして、声の主は咀嚼音のする方へ詰め寄った。
「新しいの持ってきたから、こっち見てよ!!」
その言葉を聞いて、音がピタリと止まる。
「…それを早く言え。」
重低音の声を聴いて、甲高い声が不服そうにつぶやく。
「だって、産女(うぶめ)呼びかけてもこっち見てくれないし…。」
「言い訳はいい。」
「はいはい。」
せかされて産女と呼ばれた女性は担いでいた袋からごろりと何かを取り出した。
「今回は状態がいいな。」
「だってすぐそこで取ったものだもん。」
産女おもむろにその物体へ手を伸ばそうとした。
しかし、その手首を百目鬼が掴む。
「これは、奴の分だ。」
「分かっているわ、そんなこと。」
こうでもしないと産女の体に触れてくれないのに…と呟く産女を無視して百目鬼は物体を袋に戻した。
「もうすぐだ。」
