第二章
「そんな、芽衣が・・・!?」
今までずっと一緒に過ごしてきた友達が、まさか幽霊が視えて、しかも幽霊に憑りつかれて対峙するなんて――――
『三絵殿っ!』
気が遠くなりそうなあたしの意識を雲流丸が引き戻した。
『こうなった以上は、三絵殿の友人にも危害を加えかねない、然らばそれがしが投降した方がよろしいのでは・・・。』
確かにそうだ。
元はといえば、芽衣が何故か雲流丸の身柄をよこせと言ってきたから、投降した方が平和的に事が収まる。
でも、本当にそれでいいのか。
「いや・・・。」
『三絵殿?』
「これはわがままになると思う、だけどすごく納得がいかない。」
『・・・?』
あたしの言っていることが理解できないのか首をかしげてこちらを見る雲流丸の顔を見てあたしはもっと分かりやすく話した。
「だから、芽衣の要求は分かるけど、向こうの魂胆が分からないってこと!」
雲流丸はハッとして目の前にいる憑りつかれた芽衣を見た。
「・・・あー、あいつ言ってなかったもんな。」
と気まずそうに、ダイスケは答えた。
「どういう事か、説明してくれる?」
「・・・それは」
と言いかけて、ダイスケは口の動きを止めた。どうやら、芽衣と話をしているようだ。やがて、ダイスケは眉間にしわを寄せて、あたし達に説明した。
「えっと、そいつは芽衣の目からすると、悪霊らしい。」
「悪霊?」
あのこの前襲われたあいつみたいな?
「そう、ああ俺はそういうのじゃないから安心して。」
どこかぎこちない笑顔で笑いかけるダイスケにあたしはそれが嘘だとすぐに分かった。
そして、それは真面目で嘘など嫌いな芽衣があたしに嘘をついてまで雲流丸を連行しようとしていることが知れた。
だから、あたしはこの言葉を投げかけた。
「じゃあ、何で芽衣は雲流丸を悪霊だと言い切れるの?」
その場の空気が凍った気がしたけど、あたしは構わずに次の質問を飛ばした。
「それに、あたしのこと何もできない素人って言ったよね、じゃあ芽衣は雲流丸に何ができるの?」
ダイスケの表情が次第に苦いものに変化していったことは確認できた。そして、一番聞きたかったことを聞く。
「芽衣って、何者なの?」
そして、あたしの視界からダイスケがいなくなった。
「・・・!?」
何が起こったのか分からなくて混乱していると後ろからか細い声が聞こえた。
『み・・・みつ、え・・・どの。』
振り向くと、ダイスケが幽体であるはずの雲流丸の喉を押さえつけ倒していた。
「悪いな、嬢ちゃん。」
言葉とは裏腹に何も悪気のない声が部屋に響く。
「それ以上聞けばこいつは・・・芽衣は泣き出しちまう。」
