第二章
幸いなことに母さんはパートに出ていて、あたしの家には私たち3人しかいない場所になっていた。
大体の事情を説明すると、やっぱりというかなんと言うか、怒られた。
「そんな捨てられた動物感覚で幽霊なんか拾ってくるな!」
「あ、あはは・・・。」」
「笑って誤魔化すな!」
『そんなに怒らずとも・・・。』
「あんたは黙ってなさい。」
『・・・うむ。』
あたしと雲流丸の双方に怒ってから芽衣は息を整えて、あたしたちに告げた
「とりあえず、そいつあたしが預かるわ。」
(・・・・・・え?)
いきなり言われたこの一言にあたしは思考が固まった。それは雲流丸も同じで、驚きの表情で固まっていた。
「何もできない素人よりもあたしの方が、こういう事知っているし。」
勝手に話を進められ、あたしは固まっていた思考を無理やり起こして芽衣に呼び止めた。
「ちょ、ちょっと待って!」
そして、芽衣に勢いでつい思ったことを聞いてしまった。
「よく分からないけど、そこで芽衣が雲流丸を連れていくのは違うんじゃない!?」
その言葉を聞くとまたいつもとは違う視線を使って、こっちを見てきた。
「・・・何で、そう思うわけ?」
「・・・っ。」
視線を向けられて少し怯んだけれど、あたしは理由を言い放った。
「さっきも説明したけど、あたしにとって雲流丸は恩人だから、その恩を返したいって思うから!」
我ながらにくさい言葉だと言った直後に感じたけど、雲流丸の表情を見ると少し嬉しそうだったから、良しとした。
だけど
「また、そんな理由か・・・。」
向こうは承諾してくれなかった。
『また・・・とは?』
「もういい。」
芽衣は後ろにある窓を開けて、外を覗き込んだ。
そして振り向くと・・・
『あーあ、予感はしていたが、結局こうなるのな。』
見知らぬ幽霊が窓から入ってきた。
「『!?』」
「うるさい、ダイスケ。」
ハイハイと軽く受け流すその男の幽霊は芽衣の横に立った。
『俺が呼ばれたってことは、まあ荒療治ってことだよな。』
「とっとと中に入れ。」
『・・・・・・。』
ダイスケと呼ばれた男はまだ何か話したそうだったけど芽衣の様子を見て仕方なく口を閉じた。
そして
芽衣の体に幽霊が吸い込まれていった。
「雲流丸、これって・・・!」
『・・・ああ。』
「ん、これを見たのが初めてじゃないみたいだな?」
芽衣の口でダイスケが話しかけてきた。
「すまないが、強引にでもその侍・・・引き取らせてもらうぜ。」
悪く思わないでくれよと、男はニヤリと笑った。
