第二章


三絵の入院していた病院には、未だにあの悪霊がいた。
『あーあ、せっかくみえるひとがいたのにおしかったよね。』
『しかも、きちょうなのりものもいなくなっちゃったし。』
『うん、あのろうがいゆうれいがいなかったらよかったのにさ。』
『いいよ、いいよ、つぎ、つぎをさがせばいい。』
口々にあの日のことを言う悪霊は今日も病院内を徘徊していた、そこに…。
『お?』
『おお?』
『おおお?』
自分達と目が合った人物を発見した。
『らっきーだね!』
『さあ、よこせ。』
『こんなにみじかいあいだにみえるひとがあらわれるなんて!!』
『からだ、からだ…。』
ぶつぶつと言いながら悪霊はその人物に突進するように向かっていった。

次に悪霊が見たのは病院の天井だった。

『え、なに。』
『あいつ、どこ?』
『どうなっているの?』
戸惑う悪霊が最後に視たのは迫りくるトンカチだった。

「仕事を請けたうえにお前が俺に体を貸してくれるなんて、どういう風の吹き回しだ?」
(…うるさい。)
「あ、例のあの子があいつに怪我をさせられたからか。」
(ちょっと、静かにしていなさいって!)
「ハイハイ。」
(別に…気が変わっただけよ。)

その人物は握っていたトンカチをバッグに入れるとすぐに帰って行った。
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