第一章


『…寂しそう、でござったか?』

少し驚いた様子で雲流丸が尋ねてきた。
「そうよ、ほぼ毎晩のようにただあたしの部屋にいるだけで、何もせずに突っ立っているだけとか、そりゃ気になるでしょ。」
半ば呆れてあたしが言うと雲流丸はたちまち顔を赤くした。
『…そういえば、ずっと視えていたのでござったな。』
「今更でしょ。」
『……。』
さっきの質問の答えを考えているのか、雲流丸は少しの間黙った。それに倣って、あたしも静かにする。
『…ずっと、それがしはこの地にいたのでござるよ。』
「ずっと?」
『さよう、もうかなりの年月が過ぎようというのに、この身はいまだに成仏できないでいる。』
「………。」
『生前、よっぽど悪い行いをしてきたのだろうな。』
「悪い行いって…憶えてないなら意味がないじゃない。」
『それもそうか。』
雲流丸は微笑んではいるけれど、出会ったころと同じような寂しそうな顔をしていた。
『…いい加減、地獄にでも落としてくれないものかといつも思っているからか、どうやら表情に出てしまっているようだ。』
すまないとまた寂しそうな顔で言う。

(何だ、やっぱり困っていたのか。)

あたしはどうも、困っている人を見つけるのがうまい。
元・リーダーの肩書きは未だにあたしを変わらせてはくれない。

…いや、変わっていないだけだ。

「あのさ。」
『む?』
「今回、いろいろ助けてくれたし雲流丸はあたしにとって命の恩人になったよね。」
『そう言われるとなんだか照れるでござるな…。』

「だからさ、成仏…手伝っていい?」
13/14ページ
スキ