第一章


後日、軽傷ながらも傷を負ったことで、また母さんを泣かせてしまった。
そして、母さんから話を聞いた芽衣と林檎は心配して、すぐに病院に来てくれた。嬉しかったけど、やっぱり申し訳なかった。二人にも部活とかあるのにこっちに付き合わせてしまったから…。

…正直、やっぱり看護師さんのことは直接あたしがやったことではないとは分かっていても、罪悪感がぬぐえないでいた。
『気にするな。』
あの言葉が、あたしの心を救ってくれる。

(ほんと、何の変哲もない言葉なんだけどな。)
あのどこかおどおどした感じの幽霊には、恩ができてしまった。

皆が帰ったあと、夕飯を食べていた時に雲流丸が現れた。
『怪我は何ともないか?』
「うん、退院にも支障ないって。母さんが伸ばした方がいいんじゃないかってうるさかったけど。」
『母親とはそんなものでござろう。』
くすくすと笑う雲流丸を見て、こっちもつい顔が緩んだ。食べた夕食の食器を片づけて、あたしは雲流丸にある提案をした。

「ねぇ、雲流丸。」
『む、なんでござる?』
「昨日言いかけてたことなんだけどさ。」
『ああ…なぜそれがしに話しかけたか、のことで?』
「そう、それ。」
『…あれはもう言わなくても良いのでは。』
「いいの、答えたくなったから。」
『……。』
雲流丸はじっとあたしの顔を見て、決心が固いことを悟ると観念したように質問してきた。

『なぜ、それがしに話しかけてきたのでござるか?』

「あんたが寂しそうな顔をしてたから。」
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