第一章


余談だけど、あたしには苦い過去がある。

まあ、他人からすれば、かなりどうでもいいし、こんなことでいつまでもうじうじ悩んでいる自分に腹が立つけれど、聞いてほしい。

あたしは小学3年までは、まあそれなりに女子小学生らしい感じだった。今よりも素直だったし、割とクラスの中心とまではいかないけど、皆と仲が良かった。

だけど、それがもとで、運動会のリーダー的存在に任された。

皆は悪くなかった。
けど、結果は2位だった。

全体で見れば、4クラス中2位なんだから、問題はなかったけれどそれでもこっちは優勝を目指していたのだ。

…本気だった。

結果を聞いた時のクラスの皆の視線にあたしは耐えられなかった。一番辛かったのは、何も言ってこなかったこと。

そこから、あたしはいつも冷めたように態度をふるまい始めた。
物事に本気で取り組むことが、どれほど周りに迷惑をかけるか分かってしまったから。

だから、だろうか。
雲流丸の言葉が心に響いたのは。
それだけじゃない、下手をすれば体を乗っ取られて、あたしが皆に取り押さえられることだってありえた。
雲流丸の言葉が安心感と、昔の傷に癒しをくれたんだ。

あたしが泣き終わったのを見て、雲流丸は
『もう遅いから寝るといい。』
と言った。その時にあたしは
「また来る?」
と聞いたら苦笑い気味に
『そろそろお別れなのに何一つ挨拶もなしなのは失礼でござる。』
と言っていなくなった。
とりあえず、また会えることに安堵しながら、あたしは眠りについた。
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