第一章
飛んでくる様々な医療器具をあたし…もとい雲流丸は紙一重にかわしながら、駆け足であたしの病室へ戻っていった。元から運動神経だけはいいあたしの体だけど、こんな動きもできるなんて思っていなかった。
(あの看護師さんってどうなってるの?)
「あれは…今の三絵殿とそれがしのようなものというべきでござろうか。」
(あーすごく納得がいく説明…。)
正直、今の状況が全く理解できなくてもうなすがままになっていた。それに肝心の自分の体が勝手に動くから雲流丸に任せるしかなかった。
「待てって…言っているでしょう!?」
音がこちらにまで聞こえるほど力強く投げられた物は、近くに置いてあった一人がけの椅子。
流石にまずいと思ったけれど、ずっと病院に居るからか雲流丸は掃除道具置き場からブラシを取り出して、それを回して小物と一緒に弾く。
肉体はあたしの物だけれど、こんなに動けたのかと驚く程に素早く走る。
「御免。」
逃げの姿勢から一転、逆に看護師さんの元へ低姿勢のまま走り出し、ブラシをそのまま胴体へ鋭く打った。
これには流石に看護師さんの体は悲鳴を上げたようで、そのまま雲流丸はブラシを置いて走り去る。。
幸いあたしの病室はこの階だからすぐに戻れた。戻ると同時に扉を閉め、ナースコールのボタンを押してもらった。でも、外から物騒な音が聞こえたので、できる限り扉の前に多くの荷物を置いて無理やり開かないように置いた。
「とりあえず、あとは助けを待つだけでござるな。」
(でも、他の看護師さんも…えっと、とり憑かれるようなことがあったら?)
「それはたぶんないと。」
(どうして?)
「あの看護師殿は、元からああいう体質だったので…。」
(とり憑かれやすいってこと?)
「さよう。」
なんだかここまでくると幽霊の存在を認めざるを得なくなってきた。
程なくして、駆けつけた他の看護師さんやお医者さんに看護師さんは取り押さえられた。
