第一章
『いけない、三絵殿!!』
雲流丸の声が聞こえたあたしはつい声のする方へ向いてしまい、看護師さんから視線を外してしまった。
「しまっ…」
その瞬間、視界が回った。
「…困るなぁ、私たちの獲物だったのに横取りするなんて。」
「違うな。」
な、に?
体が勝手に動いて、しゃべってる…!?
「それがしは、この子を乗っ取ろうなど思ってもいない。」
え、それがし??
いきなりすぎて頭が追い付かないんですけど!?
「三絵殿、すまないが暫しそれがしに体を借りさせては貰えないだろうか。」
聴こえたのは自分の声だけど、この話し方は間違いなく、雲流丸だった。
(え、どういうこと?全然どういうことか分からないんだけど!!)
「とりあえず、ここはそれがしに任せてほしいということでござる!」
状況は何一つ理解できないけれど、この言葉が確かに頼れるものだった。
(…分かった。)
走り出したあたしの体は真っ先に自分の病室へと向かった。
「待ってよ、久しぶりの獲物なんだからさー独り占めはなし…だよ?」
