「退治で予定より遅くなってしまったのお」

「天気予報はこの時間は雨が降るって言ってたしな…

わあっ降ってきた！」

「冷たい！」

鬼太郎は父親が濡れないようにちゃんちゃんこで凌ぐ。もうゲゲゲの森にさしかかったところだったのでこのまま走って行ってしまおうと足を速めた




帰ると少女が自分がいつも使っている古い傘を差しながら家の前にしゃがんでいた。

「…！」

どうやら待っていてくれたらしい


「ただいま」

少女は姿に気が付くと袖をぐいぐい引っ張った

「え？何？」

家に入れと言いたげな目をしていたのでその通りにした
家の中はダシの匂いでいっぱいだった。もしかして味噌汁？と聞くと暖かい椀が手渡された


「君が作ったの？」

「……（コクリ」

「ありがとう」

お礼を言うと口角だけだったが初めて彼女は笑顔を見せた。

はにかむようなちょっぴり下手な笑い方、けど無理はしていない自然な表情

胸がキュッと絞められて、この気持ちの名前は知らないが
ひとまずもう妹のようには見られなくなってしまった。


『こんな時、なんて顔したらいいんだろ…』











突然だが彼女の名前が知りたくなった。呼びづらく生活に支障をきたすからもそうだが



何よりも自分が彼女の名前を呼びたいと強く願ったからだ



少女の名前を呼べば彼女が振り向き、何か用かとでも言うような顔を自分に向けることを想像するとなんだか変な気持ちになってきた

普通の人には至極当然の反応の流れだがまるで、いかがわしいことでも考えているような気がしてきて顔は羞恥心でいっぱいになった

「おい、鬼太郎。どうかしたのか？」

「なんでもありません父さん…できれば今こっち見ないで下さい……////」