鬼太郎がこの子が誰なのか、ほかの仲間は何か知っていないか妖怪横丁へ少女を連れて行った時、彼女はすすり泣きの状態だった

「くすんっ…ズッ…」

「落ち着いた？」
声をかけても彼女が話すことはなかった。
泣かれることに慣れていない彼は少し困った顔をする。

『それにしても、足や手がボロボロだ…今まで一体何をしていたんだろう』


「あ、鬼太郎！」

「今日は早いのお」

「ごめんみんな。こんな時に呼び出しちゃって」
着いたときにには、既に仲間が集まっていた。
いち早く気が付いたのは猫娘だった

「その子…誰？」

「うん、話っていうのはこのことで…たぶん迷い込んだんだと思う…今は本人から聞き出せない状況だからみんなは何か知ってないかなって」

「なんじゃ、珍しく女子を泣かせたのか？」

「そ、そんなんじゃないってばー」

「まあまあ、珍しく客が来たんじゃ。こっちにでも座らせとき」

煽る子泣きじじいとお茶を入れようとする砂かけばばあ。

「ここに人間が来るなんて何年ぶりかしら。どうせまた興味本位で入ってきたとかそういうのでしょ」

「そうかな…それにしては反応が違うっていうか…」

その言葉を遮ったのはテレビの音声だった



次です。
昨日、××県○○市で「女の子が車の下に挟まれている」と通報があり救急車で搬送されましたが、病院先で死亡が確認されました。亡くなったのは12歳の小学六年生の女の子でした。当時、下校中だったとみられています。死因はブレーキとアクセルの踏み間違えとみています。警察は運転手の山本次郎容疑者76歳を殺傷罪の罪で詳しく調べています。



「可哀想にのお…まだ若いのに…これだから老人は車の操縦なんか任せておけんのじゃ」

「なんじゃと？じじいでもあんなかっこいい車を捌きながら海辺を走るのがロマンであり、憧れなんじゃよ！」

「その前に人が死んでるっていうとるんじゃ！」

「まあまあ、二人とも…」


「…？どうしたの？」
テレビの前にふらふらと近寄る少女に異変を感じた鬼太郎は声をかけるが耳に届かない

「…！？おい、テレビが見えんではないか！」

子泣きじじいが少女をどかそうと肩を動かすとそのままバタンと体ごと倒れてしまった。

「あ！」

「じじい！いくら見知らぬ人だからと言ってやっていいことと悪いことがあるぞ！」

「す、すまんのお、お嬢ちゃん…」

「大丈夫！？」

鬼太郎が体を起こさせると、整っていない荒い前髪の隙間から虚ろな目がこちらを見ていた。

「…あれ、知り合い？」

「…」

「君…名前は？」

少女はしゃべらなかった。否、話そうとしているのだが唇の先が震えるだけでその後は出てこなかった。それを見抜いていた


「話したくないなら無理に話さなくていいよ。
大丈夫、ここにいるみんなは君の敵じゃないから」



仲間に聞いても大した収集がなかったため仕方なく家に帰った

「あ、鬼太郎がニンゲン連れてる！」

「食べていい？」

「駄目だよ。僕の客人なんだから」

「しかし問題はこの子が誰なのか分からないことじゃな。きっと親御さんも心配しておるじゃろう」

「そうですね…」

「無理やり口を開かせることもできなくはないが…」

「ッ…！？父さん！！」

「それはお前の望むところではなかろう」

「もう…心臓に悪い冗談はやめて下さい…」