黄色い花の冠を君へ
名前
ノエラモンスター
ガスター博士に作られた娘
受動的な性格
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「(あー……終わっちゃった)」
大回廊の装飾された天井を見ながら腑抜けたことを考えていた。魔法はある程度使えるサンズよりもHPはあったから、太刀打ちできると思っていたのにな…
傷だらけになった身体、身体から流れ留まることを知らない自分の血。どうやら自分は他と違って死んでも塵にならない身体のようだ。こんな状況で欲こんなことが分かるものだ。
私は一体何がしたかったのだろう。失ったこの先、守るものなんて何もないのに。自分の感情に身を任せて歯向かったらこのザマだ。結局私という存在は世の理から外れた傲慢な奴なんだ。
サンズ、………どうして、そんな私を守ってくれたの?
奴の足音が聞こえる。まだ息があるのがばれたか……
今度こそ、死ぬ。
そう思っていた
「………キャラ…?」
少年は立ち止まる。
ああ、この機に及んで幻覚まで見えてきたな…
でも、もうどうでもいいや。最期に夢くらい見てもいいだろう
「キャラ……キャラ…」
ーーー
Chara side
ボロボロになったノエラが私の名を呼んでいる。相変わらず馬鹿な奴だ。お前を傷つけたのは紛れもない、この私なのに…
しかし、私の胸は締め付けられていた。おかしい、こうなることはもう既に分かっていたことなのに…
私はこの世に再び生を吹き返すことができた。それはプレイヤーとの利害の一致によって起きた事。フリスクという少年の身体を乗っ取り、少しづつ我が物にしていった。プレイヤーがどういうつもりで”戦う事”を選択しているのかは知る由もない。所詮ろくでもない事だ。
再び生まれても私自身の憎しみを消すことはできなかった。そう、まるで”あの時”から動画を再生しているように
しかし、ようやくプレイヤーからの主導権も奪えた今、私の中に何とも言えない物が沸き上がって来た
「キャラ……私…死んじゃった…」
本人がそれも知らずにいてくれたのがせめてもの救いか
私はノエラ後の血がべっとりと付いたナイフを捨て、彼女に駆け寄った。広い回廊にカランと金属の音が響く
手を握ると、疲れ切った表情で私に微笑んでくれた。今度は…逆だね
「ノエラ…」
「ごめんね」
「…」
「私、キャラとアズを…守れなかった……」
「………何を言ってる。ノエラは今の今まで生きててくれた。それで充分じゃないか」
こんな偽善の言葉、一体どの口が言っているのだろう
ノエラはううんと首を振る
「私、結局今回も見殺しにした。友達も、兄弟も、家族も……
きっと天国に行ったら歓迎されないね…」
周りの人達がどんどん殺されていく中、自分一人だけ生きている事がどれだけの地獄か…自分の中では分かっていた
「大丈夫、私とアズがいる」
その弱り切った小さな身体を抱き締める。儚いその存在は、すっぽりと埋まってしまう
「そっか、……
アズは…?そこにいるの?」
「……………ああ、いる」
苦し紛れに嘘をつき続けた。頑張って来た彼女に、最期の最期はせめて綺麗なままでいて欲しい
また三人で遊べるねと、初めて見た綺麗な笑い顔が今はそれですら苦しい要因になっていた。
死期が近いのか、息と言葉が段々途切れてきた。言う事があるなら今しかない
「きゃら………」
「何だ」
「私、…今ならあの時の……分かる気がする」
「…?」
「きゃら…私、きゃらがすき…!」
「!」
「あのときのは…そういう、意味でしょ?」
「……ああ、
私も好きだ、ノエラ。愛してる」
そのふっくらとした唇に強引にそれを押し付けた。
ずっと、こうしたかった…
自分の借り物の身体から満たされていく感じが昇るのが分かる。ゆっくり離してやると、へにゃりと笑った
「すき…きゃら、すき」
「うん」
「天国に行ったらね、アズと一杯遊んで……きゃらのこと言って………デーとも一杯して……はぐして、………ちゅーして………」
「うん、うん…」
そのまま、彼女は眠るように落ちて行った。
「おやすみなさい、眠り姫。永遠に、そのままの美しさで…」
額に再び口付けると、立ち上がる。ここにもう用はない。
ナイフを拾うと再び最奥を目指す。
さあ、プレイヤー。君の欲が招いた小さな、小さな物語の結末を私と共に見に行こうか?