1_ Birthday to U

・・・・・・ポーン_おはようございます、午前6時となりました。おは_ゴソッ_____まさか病院の仮眠室で誕生日を迎えるなんて。

「眠みぃ」


1_ Birthday to U




あくびしてもカフェイン取っても気怠さは襲ってくるが、気持ちは妙に清々しい・・・・・・それは忙しさゆえ睡眠をしっかり取れなかった結果の高揚ハイ状態になってるから。
ランナーズ・ハイやクライマーズ・ハイって聞いたことないかな。要はそれ。


「退勤まで、あとぉ3時間と24分」


医師は理不尽だ・・・・・・「健康」という生活基盤を担う重要な職であるのに、滅多に感謝・賞賛される事ないし治療してもクレーム、最善を尽くしてもクレームの大嵐。
外来や当直に急変対応etc...。身を粉にしても給料が大体釣り合ってない。だったら、音楽一本に絞ればいいと思うんだよねぶっちゃけ本当に

ガサッ!


仰向けでソファーに寝っ転がり手のひらを向けてた指先へ、ビニール袋の重み。朝から差し入れする同僚ヤツは_____同期の南雲ナグモ サトルだけ。
夜勤の看護師と違って当直の医師はご飯出ないからありがたい、ありがたいけど・・・も。


「なんで苦手なすじこ入ってんの?
もうツナマヨおむすびしか選択肢ねーじゃん! バカ!! 楽しんでんじゃねーよッ!!!」

「いやぁ〜20円引きだったからさ」


ケラケラ大笑いする黒髪短髪の南雲は、隣を陣取ると共に買ったミネラルウォーターの封を切る。
俺もフィルムを外し、ひと口運んだ。


「113号室に収容したナナセちゃん、今日退院だって。子供の“溺水”ってワードは毎度ドキッとさせられるわ」

「静かに溺れるから親もッすぐ気づけないしね」

俺が断固と手をつけないおむすびを手に取り「そういや、今日で何歳になったんだっけ?」なんてサラッと聞く。
普通はまず「おめでとう」が先でしょ。


・・・・・・言う必要ないじゃん・・・26」

「おぅおぅ! カミカゼ先生もついに26歳かぁ〜。お め で と〜〜〜〜!!」


素直にムカつく。お前も先々月で26歳だろ・・・イジって何が楽しいんだよ、こいつは。
医学部時代へ戻れるなら入学式の出会いを抹消したい、真面目に。いや、りませんよ? 現代いまじゃ俺達5匹は健全な国民なので。

「ごちそー様。んじゃ皆を起こしてくるわ」

向かうのは一般病棟。皆というのはもちろん患者さん。だけど小さい・・・語弊があるか。成長真っ只中って言った方がいいね。
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