2_ヒトミシリ、コモゴモ

_____季節は 春・3月へと移り代わった。
芽吹きはもちろん、耳に聞こえる風音も頬にあたる冷たさも、春特有の暖かみが加わって家の掃除が楽しい。なんせ(お風呂や自室を除く)掃除は皆好きじゃないので、オレ以外やる奴がいない。

「ょし!
バルコニーの掃除終わりっと! ホントに今日は暖か・・・・・・う〜〜!!!」

ルーフバルコニーの手すり部分を全部拭き終えて凝った体をほぐすために伸びをした。


2_ヒトミシリ、コモゴモ






「_____No. I can't think of any」

出入口がカラカラと開いたと思えば、ジョ二ー。
離れスタジオにて依頼された作曲案件へ没頭していたものの、ついにSAN値が切れたらしく休憩・・へやってきた。


「モシヤ掃除中?」

「今終わったとこ! あ、喫煙スペース邪魔しててごめん。
案件で思い浮かばないなんか、ジョニーにしちゃ珍しいな〜? いつもスラスラ順調なのに」

「独リ言聞コエテタ?
イヤサ、今回 Conceptコンセプトガ難シイノヨ。ッハァー・・・・・・出来チャエバ後ハ順調二進ム、予定ナンデスケド」

「予定なのかよ」

「ソ。予定〜」


お互いに笑い合っての静寂・・・・・・甘く重そうなタバコの匂いをほんのり漂わす彼が「今年ノ3月ハ静カネ」と呟く。確かに。
卒業式も入学式もない日常生活だけの3月は、常々年下組の保護者を担ってるオレ達へ違和感をもたらしていた。
こんなにも静か。
恒例の上旬〜中旬なら巣立つ姿に号泣してた気がするし、下旬は下旬で入学式のことでワタワタしてたのに。今年はどれもなく。
これも感染症がもたらした結果なのだろう。
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