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第20章

1
「…………」
魔矢を倒してから数日、舞は月夜と行動することの多い神蘭と、二人とは距離を置いている様子の封魔を見て、溜息をついた。
「……また気にしてるのか? 」
そんな舞に、飛影が声を掛けてくる。
「……うん。……だってあの二人、あれから話してないし。……私も余計なことを言っちゃったしね」
そう言えば、今度は飛影が溜息をついた。
「……今は時間が必要なんだろ。お前がずっと気にしていても仕方ない」
「でも! 」
そう返した時、神蘭が何か楽しそうに月夜に話し掛けているのが見えた。
二人は言葉を交わし合うと、そのまま連れ立って出て行く。
それを目で追っていた舞だったが、それは自分だけではなかったことに気付いた。
(封魔……)
白鬼と話をしながらも、視線で追っていたらしい彼は、舞が見ていることに気付くと、何もなかったように白鬼へ視線を戻してしまう。
「だから、ほっとけって……」
それと同時に、呆れたような飛影の声が聞こえてきた。
2
「はぁ……」
(昨日もあの二人話さなかったな…… )
事務的な会話をしているのは見たが、それ以外は話しているのを見ていない 。
(飛影は放っておけって言ってたけど ……)
そう思った時、ふと周りの空気が変わった気がした。
その後、僅かに足音が聞こえてきて、視線を向けると天奏の姿があった。
(天奏……!! )
今度は何の為に現れたのかと警戒する 。
「そう警戒しないで。……今回はある情報を持ってきてあげたのよ」
「情報? 」
「そうよ。次に仕掛けてくるのは白羅 。それも魔宝具を使ってくるわ」
言葉の中に出てきた〈魔宝具〉という単語。
それに聞き覚えはあったが、それがどんなものだったのかは思い出せなかった。
(危険なものだったような気はするんだけど……)
「……そこまでは思い出せていないのかしら? 」
思っていたのと同じタイミングで言われる。
「……何となく使われるとまずかったような気はするんだけど」
「そうね。それについては、飛影か煌破にでも聞いてみるのね」
そう言うと、天奏は姿を消す。
(そうか。私は覚えていなくても、魔神族である二人なら、魔宝具のこと知っていてもおかしくはないよね)
内心で呟き、二人を探すことにする。
二人を見つけたのは、魔族軍の訓練場で手合わせしているところだった。
3
「魔宝具だって? 」
「何故、お前がそれを? 」
天奏に言われた通り、問い掛けてみると二人は少し驚いたように視線を向けてきた。
「えっと……、それってやっぱり危険なものなの? 」
二人の視線が何故今そんなことを聞くのかと問い掛けてきている気がして苦笑する。
「それは物にもよるな。魔宝具といっても幾つかある」
「ただ、その中でも厄介なものはあったな」
そう言った煌破は思い出そうとするように思案顔になった。
「確か俺の記憶だと、それは普段は玉の形をしていたな」
「普段は? 」
その言い方が少し気になって、舞は聞き返す。
「ああ。使おうと思ったことはないから変化した後しか見たことはないが、使ってた奴を見るといつも形が違っていた。……恐らく使い手に合うよう変化しているんだ」
「でも、それだけなら其れ程危険なものとは思えないんだけど……」
「そうだな。俺もそう思って、資料を見たことがある」
舞の呟きに、そう答えたのは飛影だった。
「その資料によると、その玉にはある人格が宿っているらしい。それは通常眠っているみたいだが、目覚めると使い手の意識を乗っ取るそうだ」
「それだけじゃない。その後は使い手の力が何倍にも跳ね上がり、全てを滅ぼすまで止まらない狂人とかす。……それもあり、普段は麗玲が管理し許可がなければ使うどころか、保管場所へ近付くことも許されない」
「……じゃあ、麗玲が白羅に許可を出したってこと? 」
「……少し気になることはあるが、… …成る程、白羅か」
飛影が目を細める。それと同時に煌破は頷いた。
「奴なら他の奴よりは狙いを読みやすいな」
「えっ? 」
どういうことなのかと二人を見る。
「ああ。あいつの性格的に俺達全員を一度に相手にすることはない。狙ってくる奴を絞る筈」
「それって……、もしかして私達? 」
裏切られる前に狙われたことを思い出し、舞は自身を刺したが、飛影と煌破は首を横に振った。
「いや。奴が狙うのは俺達だろうな」
「正確には俺、煌破、封魔、月夜ってところか。あと、可能性があるのは白鬼、雷牙、風夜」
「なんでその七人に絞れるの? 」
「真っ先に裏切り者を狙う。あいつは魔神族への忠誠心が凄いからな」
「そ、そうなんだ」
顔を引き攣らせながら、舞はそう返した。
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