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第16章

1
「……おかしいな」
花音と光輝の様子がおかしくなったのが花音の家に行ってからだということもあり、何か手掛かりが残されていないかと訪れた花音の家の前に着いた途端、刹那が呟いた。
「おかしいって何がだ? 」
「舞には話したが、花音達と来た時、家は隠されていて俺が入口を抑えておくことで二人を中にいれたんだ。……だが、今は……」
視線を向ければ、そこにはちゃんと家が建っている。
「お前が離れていたのはどのくらいの時間なんだ? 」
「……そう長い時間ではないな。……十五分くらいか」
風夜に聞かれた刹那が答える。
「……とにかく中に入ってみよう」
そう言い、舞はインターホンを押す。だが少し待っても、誰も出てくる気配はなかった。
「……お邪魔します」
鍵も掛かっていなかった為、一応声を掛けて入る。
「……おばさん?おじさん? 」
声を掛けてもいないのか反応はない。
「……出掛けてるにしても不自然だな 」
舞が遠慮がちに動いている間にもザッと家の中を見てきたらしい風夜が言う 。
「不自然って? 」
「こっちを見ればわかるさ」
そう言った風夜についていくと、彼はリビングへと入っていく。
舞もついていって中を伺うと、確かに違和感があった。
テーブルの上には飲みかけのコーヒーや読んでいたのだろう本が置きっ放しになっている。
キッチンの方にも片付けきれていないものがある。
何よりリビングに入ってきてから、気になることが一つあった。
(どうして此処に麗玲の気配が……)
「どうした? 」
少しぼんやりとしていた舞を不思議に思ったのか、風夜が聞いてくる。
「……えっと、何故此処で麗玲の気配がするのかなって思って」
「……何? 」
舞の答えに風夜が眉を顰めて呟いた時 、ピピピッと何かの音が聞こえた。
「この音は? 」
「悪い、俺だ」
風夜が言って、腕についているブレスレットに触れる。
それが僅かに光ったかと思うと、そこから封魔の声が聞こえてきた。
『……風夜か?まだ花音の家にいるのか? 』
「ああ」
『……魔界へ戻る前に光の街へ来い。大変なことになってる』
聞こえてきた声に舞は風夜へ近付く。
「大変なことって? 」
『説明するより見た方が早い』
聞き返すとそう返ってきて、舞は刹那を見る。
視線を受けた彼も頷いた。
2
封魔からの連絡を受け、光の街へと来ると、舞は思わず息をのんだ。
街全体が氷に包まれている。
「これは!? 」
刹那が驚き声を上げる。
「……此処で驚いてるなよ。中はもっと酷いぞ」
その声に視線を向けると、封魔が歩いてくる。
「中はもっと酷いって、どうなってるの? 」
少し嫌な予感がしつつ問い掛ける。
「……気になるなら、自分で見てみろ 。……あまり勧めはしないけどな」
「……えっ? 」
その言葉にそれだけ酷い状況なのかと不安になったが、此処まで来たからには自分の目でも確認しておきたいと街の中へと入ってみることにした。
「……酷い」
街の中に入りすぐ見えたものに、舞は足を止め呟いた。
街にあるもの、いる者全てが凍りついている。
「……冷たくない。氷とは違うの」
「どちらかというと、兄上達が数百年間閉じ込められていたものに近いんだろうな」
「……まぁ、花音と光輝を脅すには十分だな。まして、この街は何度か被害があったし、離れる時にもう大きな被害はないだろうって思っていただろうしな」
刹那が言うのを聞きながら、舞は花音と光輝が去っていった時のことを思い出す。
その時、それまで何も言葉を発さずにいた風夜が近くの壁を殴りつけたのが見えた。
「……ちょっ、ちょっと」
其処が欠けたのが見えて、舞は慌てて声を掛ける。
その声に反応して振り返った風夜の目は紅く染まっていたが、すぐに元の色に戻る。
「……下衆共が……」
だが、その口から出た言葉は今まで聞いたことないくらい聞いたことがないもので、自分が言われた訳ではないのに舞は身体を震わせた。
「……落ち着け。今の状態ではどうすることもできない。……花音達に飲まされた薬の所為で、力を使うのにかなりの制限が掛かってるしな」
そう言った封魔に
「……わかってる」
と返した風夜の声は低いままだった。
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