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第16章

1
「……厄介なことになったわね」
麗玲と花音の様子を見た後、天奏は自室に戻ってきて呟いた。
(……麗玲の手に光鈴まで堕ちるとは思わなかった。……でも、私が動くことはまだ出来ない)
そこまで考えてあることを思い出す。
(そういえば、あの子の弟も今ならいたわね。それなら彼を使うしかないか )
そう思った天奏は光輝を探す為に部屋を出た。
少しの間彼を探していると、ぼんやりとしている姿が見つけた。
「……光鈴の転生者の弟ね」
声を掛けると、驚いて振り返る。
「お前は? 」
「……私は天奏。……話があるの。誰にも聞かれたくないからついてきてくれないかしら? 」
そう言った天奏を光輝は訝しげに見てくる。
だが、のんびりしていて誰かが来てはまずいと天奏が歩き始めると、後ろから彼がついてくるのがわかった。
2
「さぁ、入って」
自室に戻り光輝を中に入れると誰も入ってこれないように鍵を掛ける。
「……話って何だ? 」
「……結論から言うわ。……光鈴が麗玲の手に堕ちた」
「……はっ? 」
天奏の言葉に何を言われたのかわからないといった様子で目を見開く。
「……今、何て……? 」
「光鈴が……、あなたの姉が麗玲の手に堕ちたと言ったのよ」
もう一度言えば、漸く何を言われたのかわかったようだった。
「姉上が!?……っ……! 」
「待ちなさい」
飛び出していこうとする光輝を止める 。
「あなた一人で何が出来るというの?まして、力も奪われているあなたが… …」
「…………」
黙り込んでしまった光輝に溜息をつくと、天奏は近くにあった棚から瓶を取り出して彼の前に置いた。
「これを持って、あなたは戻りなさい 」
「…………何? 」
「……あなた達が飲ませた薬の解毒薬よ。これを持って戻って、今言ったことを伝えなさい」
そう言うと光輝は意外なものを見るような表情をしていた。
「……意外だな。お前は麗玲の仲間じゃないのか? 」
「…………今は、ね」
呟くように返して、瓶を押し付けるが光輝は受け取らない。
「…………悪いが、俺は姉上をおいていくつもりはない。それに戻ったところで、街はあのままなんだろ? 」
「……こっちに残っても出来ることはないわよ」
「…………わかってる。それでも…… 」
戻るつもりはないのだと伝えてくる光輝に溜息をつく。
「でも、これは渡してほしいのだけど ……」
「俺が持っていたって受け取らないだろ」
そう言い光輝は少し考えると、何かを思い付いたような表情をする。
「……そうだ。……あれなら時間は掛かるかもしれないが」
「……何か方法があるの? 」
「……ああ。少しだけ協力してほしい 」
そう言ってきた光輝に天奏は頷いた。
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