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其々の路

1
「よし、これで忘れ物はないかな」
「ピイイイ」
紫狼の屋敷の部屋で、荷物を纏めていた花音は部屋の中を見回す。
そして、忘れ物がないことを確認して部屋を出ると、丁度風華と空夜が歩いてきた。
「花音ちゃん、おはよう!」
「あ、風華ちゃん!空夜さんもおはようございます」
花音に気付いて駆け寄ってきた風華の後ろから近付いてきた空夜に挨拶する。
「ああ。おはよう」
「やっと帰れるね」
嬉しそうに話す風華と空夜と集合場所まで行くと、それぞれの場所へと帰る者達の姿しかなかった。
見回してみても、紫狼、沙羅、梨亜、夜月、風牙の姿はない。
「今は魔界も色々混乱しているみたいでね。忙しいみたいよ」
キョロキョロと見回していた花音に気付いて、琴音が言う。
「……そう。挨拶くらいしておきたかったんだけど」
「ま、仕方ないだろ。それより、まずは神界だろ。その次は何処へ飛ばせばいい?」
「風の国でいいんじゃない?まだ、大体の一族がそこにとどまっているみたいだし」
「わかった。それでいいか?」
刹那が確認するように問い掛ければ、雷牙達は頷いた。
「よし、じゃあ、行くぞ」
そう言って刹那が集中し始めたのとほぼ同時に、それまで近くにいた風夜が力の範囲から抜けるように花音達から離れた。
2
「風夜?」
それに気付いた火焔が声を上げたのに、仲間達が風夜を見る。
「……俺も此処でお別れだ」
「風兄様!?」
「何言って……」
唐突に別れを告げた風夜に、風華と水蓮が声を上げたが、彼はそのまま続けた。
「俺はもうお前達とは違う」
言いつつ、風夜は自身の髪を数本引き抜くと、空夜にそれを差し出す。
「……何のつもりだ?」
「……風の国の第二皇子は【死んだ】。此処にいるのは、【魔族】の俺だ」
「…………」
「もう風の国に戻るつもりはない」
「……わかった」
頷いた空夜が風夜の髪を受け取る。
「風兄様、もう会えないの?」
「……風華も、国のことは頼んだぞ」
涙目になっている風華の髪を撫でてから、風夜は再び離れた。
「……そろそろ行くぞ」
「そうだな。あまり此処にいたら、俺も叱られる」
風夜が十分に距離をとったところで、刹那が能力を発動させる。
「……元気でな」
「うん!……風夜も、今までありがとう。本当にありがとう!」
刹那の力が発動し、移動の為に周りの景色が霞み始める中、風夜を見たまま花音はそう叫んだ。
そして彼の姿が見えなくなった次の瞬間には、神界についたのだろう、神聖な雰囲気に包まれた場所にいた。
「……着いたみたいね」
辺りを確認した聖羅が言う。
「それに此処なら、中央も近いな」
そう言う神蘭の声を聞きながら、花音は雷牙達を振り返った。
「じゃあ、皆、またね」
「ああ。先に戻ってるよ」
「戻ってきたら、教えてくださいね」
「うん」
紫影と紫姫に頷いて、花音は夜天、光輝と共に離れる。
三人が離れると刹那が再び能力を使い、仲間達の姿が消えた。
「さてと、神ちゃん達は報告に行くんでしょうから、あなた達は私に付いてきてね」
そう言うと、神麗は花音達を先導するように歩き出した。
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