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決戦の時

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「……っ」
弓を構えたまま、花音は肩を上下させて息を整える。
もうどれだけの矢を放ったのかわからない。
神麗が改良してくれたことで、属性の力が切れることはなかったが、そろそろ花音の集中力がきれそうだった。
それでも、まだ男にダメージを与えることは出来ていない。
余裕の笑みさえ浮かんでいる男に、だんだん泣きたくなってくる。
「どうする?諦めるか?」
その時掛けられた言葉に、花音はキッと男を睨み付けた。
そして、此処には自分しかいないのだから、一人でどうにかしなくてはと頭を働かせる。
それでもなかなか良い案が浮かばずにいると、男が動いた。
花音の足元を狙って力を放出したかと思うと、地面が急になくなり、花音の身体は投げ出されていた。
「きゃあああ!」
なす術もなく落ちていく花音を楽しげに男が見下ろしているが、どうすることも出来ない。
その時、空気を切るような音がして、落ちていく花音の腕に何かが巻き付いたかと思うと、強い力で引っ張られ引き上げられた。
「何っ?」
それに男が驚いた表情をする。
上まで引き上げられ、花音の足が地面に着くと、それまで腕に巻き付けられていたものは解かれる。
気付いた時には、風夜、神蘭、封魔に背で庇われていた。
「お前達、一体何処から入ってきた!?」
三人の姿を見て、男が信じられないと言うように言う。
「花音の矢のお陰で大体の居場所はわかったからな。お前の力が弱い部分に繋げてもらった」
風夜の言葉で、賭けで放った空間属性の矢が届いていたのだと知る。
それにほっとしていると、いつ現れたのか、窮姫の声が聞こえてきた。
「私は邪魔が入らない内に始末しろと言った筈よ。なのに、これはどういうことかしら?」
そう言って、不機嫌そうな表情を浮かべた窮姫に男は不敵な笑みを浮かべた。
「ああ。確かに言っていたな。だが、その前に……」
「!!」
次の瞬間、窮姫の近くの空間が歪んだ。
それに気付いてその場を離れる窮姫を追うように、男は空間を歪めていく。
「一体、何して……?」
「仲間割れか……」
何が起きているのかわからずにいた花音の横で、封魔が目を細める。
「でも、どういうことだ?彼奴、窮姫の部下じゃないのか?」
「……部下?違うな。私は五将軍の地位を狙っていた。そして、今やその将軍も一人、私にとってはまたとないチャンス」
風夜の声が聞こえたらしい男が攻撃しながらも言う。
(えっと、これって脱出するチャンスなのかな?)
男の意識が窮姫に向けられているのを見て、花音はそう思い、風夜達に声を掛けようとしたが、その前に近くに大きな歪みが発生する。
「こいつをやったら、お前達の番だ。それまでは向こうに行ってな」
「きゃあああ!」
「「「うわあああ!」」」
そして、その言葉と共に、その空間へと引きずり込まれた。
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