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第12章

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「……前魔王、俺の父の知らないところで黒姫、……魔族側のリーダー格だった奴と魔神族は接触していた。……魔神族に唆された黒姫は自分に賛同した魔族を率いて、神界に戦いを仕掛けたんだ。そして前魔王はそれを知っても、見て見ぬ振りをしていたのさ」
「でも、魔神族はそんなことを? 」
「奴等にとっては神族だけでなく、魔神族も邪魔な存在だからな。本当なら潰し合わせたいところだったんだろ」
「なら、前魔王はそれを知ってて動かなかったんですか? 」
「……父は自分に害がなければわりと無関心な人だったからな。……黒姫達の方が優勢だと確信すれば、神界を手に入れる為、動いたかもしれないが」
舞と花音に答え、緋皇は風夜を見た。
「……逆に神族に味方して、力を貸した奴がいて、そいつの影響もあり、魔族に反旗を翻した奴等もいたけどな」
「俺は元々魔族じゃないからな。俺は俺が信じる道をいくだけだ。……反旗を翻されるってことは、他にも何か不満があったのでは? 」
「……くくっ、違いないな」
「……まぁ、その切っ掛けになった新参者を気に入り、自分の身辺におく王も王じゃないですか」
低く笑った緋皇に、莉皇は呆れたように返す。
「神界の上層である神子とずっと繋がっていた奴には言われたくないな」
そこまで言って、緋皇は三人のやり取りに口を挟めずにいた舞と花音に気付き一つ咳払いした。
「……とにかくだ。俺は前王と違って静観するつもりはない。……魔神族を危険だとも思っている。だから、出来れば神族とも協力したい」
「その為に私達を助けたんですか? 」
「……ああ。……神界に魔神族のスパイがいたことは既に莉鳳から聞いていた。……お前達には悪いが、助けるタイミングとしてはあの時が一番よかった。とにかく、他の奴等とも協力の件を話し合ってほしい。……まぁ、まずは怪我を癒すのが先だろうけどな。部屋はそのまま使うといい。……今は此処が一番安全な筈だ」
そう言って、緋皇は玉座から立ち上がる。
話は終わりのようだった。
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「……まだ他の皆は気が付いてないんだね? 」
数人ずつ分けて部屋で休ませていると聞き、様子を見て回ったものの、まだ他に意識が戻っている者がいなかったことに舞は呟く。
「……此処は魔界だからな。……神族やそれに近い力を持つ者の回復には時間が掛かるんだ」
莉鳳のその言葉に舞は改めて彼と風夜の身体を見る。
自分と花音はガーゼを貼っていたり、包帯が巻かれていたりするが、二人には見当たらなかった。
「ちなみに神界から此処に来たのは二日前だ」
「二日!? 」
「私達、そんなに眠ってたの!? 」
「お前達は十分、早い方だけどな」
驚いた舞と花音に、風夜が返してくる 。
「……とはいえ、あまりのんびりしてもいられないんだよ」
そこで莉鳳が真剣な表情になる。
「緋皇様は此処が安全だと言っていたが、本当はそうも言っていられない」
「……それって、まさか」
「……ああ。神界と同じく魔神族の奴が潜り込んでいる。……十人衆ではないが、それに近い力を持っている奴がな。そして、それが誰なのか、何人いるのかはまだ掴めていない」
「「……!! 」」
「とにかく警戒だけはしておいた方がいい。いつ仕掛けてくるかわからないからな」
莉鳳と同じように真剣な表情で言ってきた風夜に、舞と花音は緊張した表情で頷くしかなかった。
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