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広がる戦火

1
(半径一kmを消し飛ばすほどの兵器か……。そんなのが使われたら……)
夜、ベッドに横になり、黄牙の言っていたことを思い出す。
もしそんなものが使われたら、どのくらいの被害が出るのかはわからない。
それにもかかわらず、黄牙の言う言葉を信じようとしなかった総長のせいで、彼は一度戻ってしまった。
(それに、何だろ?この感じ……、何だか落ち着かない……)
「……眠れないの?」
寝付けなくて寝返りをうっていると、すぐ隣のベッドにいた琴音の声がした。
「ごめん、起こしちゃった?」
「ううん、たまたま目が覚めただけ」
琴音がそう返してきた時、花音の枕元で丸くなっていた白亜が身体を起こす。
かと思うと、何かに怯えるように声を上げて暴れだした。
「ピッ?ピイ、ピイイイィィ!」
「ちょ、白亜!皆、寝てるんだから、静かにして」
「ピイイイ!」
花音が注意しても、声が聞こえていないのか騒ぎ続ける。
それを不思議に思っていると、不意に外が明るく照らされ、大きな爆発音が聞こえた。
「な、何っ、今の音?それに今の光……」
「神界軍本部なら何かわかるんじゃない?」
「私、ちょっと聞いてくる!」
花音はそう言うと、部屋を出た。
「花音、どうした?」
神界軍本部のあるフロアに来たところで、丁度神蘭と会う。
彼女は待機状態だったのか、ラフな服装をしていた。
「神蘭さん、さっきのは?」
「まだわからない。私も確認しにいくところだ。とはいえ、まだ詳しい情報が入っているか怪しいが」
「…………」
「とりあえず、皆集まってるだろうから行くつもりだ。花音も来るか?」
聞かれて、折角ここまで来たのだからと花音は頷いた。
2
神蘭と共に神界軍本部に入ると、既に封魔以外のメンバーは集まっていた。
「封魔は?」
「さっきの音がした辺りを調べに行っているそうよ。少ししたら、戻ってくると思うわ」
一人だけ姿のないことに神蘭が聞くと、鈴麗が返してくる。
集まってはいるものの、誰も何も言わないところを見ると、まだ情報がないのだろう。
今は調べに行ったという封魔が戻ってくるのを待つしかないようだった。
どのくらいの時間が経ったのか、何かを思案するように目を閉じていた総長が目を開け、呟く。
「……来たか」
声とほぼ同時に扉が開き、封魔が入ってきた。
「どうだった?」
「ああ。何もない平地の部分だったが、半径一km位が吹き飛ばされ、大穴があいていた。もし、人が住む場所に当たっていたら、被害は大きいだろうな。そしてその場からは、かなり強い魔力を感じた」
「!!それって」
「……どうやら、あの時彼が言っていたことは、本当だったみたいね」
言いながら、聖羅が総長の方を見た。
「……この前来た彼の話を信じるなら、魔界へ行って直接破壊しないといけないらしいけど?」
「…………」
視線を向けた聖羅に、総長は溜め息をつき、渋った様子で口を開いた。
「…………仕方あるまい」
「ですがあなた、魔界へ行けば、我々の力は自然と制限されてしまう。それについては……」
「……だが、他に方法はないのだろう」
反対らしい副総長が口を開くが、直ぐに黙りこむ。
「せめて、魔界の空気に慣れるまで様子を見れる場所があればな」
「ふふ、それなら心配いらないわ」
龍牙が呟くと、不意に神麗が笑った。
「心配ないって、どういうことだ?」
疑問を感じたらしい白夜が聞く。
「ええ、沙羅さんの手紙に書いてあったのだけど、魔界で拠点に出来そうな場所を見付けたそうよ」
「その場所は?」
「さぁ……。この前の彼が、そこへの案内役でもあったんでしょうけど。追い返してしまったもの」
「それって、黄牙くんのこと?」
花音が聞くと、神麗は頷いた。
「……でも、追い返してしまったのなら、仕方ないわ。また誰かが来るのを待つしかないでしょうね」
そう言うと、神麗はやることがあると出ていってしまった。

魔界から攻撃を受けて、数日後。
再び神界を訪れた黄牙と共に、花音達は彼が神界へ来るのに使ったゲートを開いた場所に来ていた。
「……それでいいのか?花音達はともかく、お前達が全員魔界に来て」
聖羅や神蘭達を見て、黄牙が聞く。
「……ああ。総長の指示だからな」
「私は……、行かないと。黒姫が向こうにいるなら、尚更ね」
神蘭に続いて聖羅が答えると、黄牙は次に花音達を見た。
「お前らも本当にいいんだな?」
確認のような言葉に、花音達は頷く。
「そうか。なら、行くぞ」
黄牙が言い、案内するように歩き出す。
そして花音達は神界を出た。
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