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第11章

1
凍矢を助けてからそれほどの邪魔もなく、舞達は神界軍本部のある塔の中へ入ることに成功していた。
「お前達の足止めに動かされたのは俺だけだったからな。後の奴等は全員、魔神族の奴等といるはずだ」
いつもの調子に戻ったのだろう、凍矢が言うのを聞きながら、舞は周囲をそっと見回す。
そこには激しい戦闘の跡があり、神界軍の兵も魔神族の兵も倒れていた。
その中に知っている顔はない。
それに安堵はしたが、胸のざわつきは大きくなっていくばかりだった。
「……この先だな」
塔を上がり始めてどの位の時間が経ったのか、大きな扉の前で飛影が言う。
(……この先に……麗玲がいる! )
舞がそう思い気持ちを落ち着ける為に大きく深呼吸をした時、目の前にある扉の向こうから悲鳴が聞こえてきた。
「いやあああ! 」
「!!今の声! 」
「聖姫さん!? 」
「……行くぞ」
今の声に只事ではないのを感じ、扉を開け放つ。
その先に見えた光景は、舞達の動きを止めるのに十分なものだった。
2
「あら?遅かったわね」
部屋の奥、此方へ背を向けていた麗玲が扉の所で立ち竦む舞達に気付いたのか振り返る。
「ふふ、今終わったところよ」
そう言った麗玲の近くには、一人の男性が倒れ、聖姫が力無く座り込んでいる。
それ以外にも部屋の中を見回せば、立っているのは魔神族ばかりで、かろうじて封魔と蒼魔、光鳳、聖波だけが膝をついていて、後は地に伏し、意識もないようだった。
(何、この状況……)
自分達が来る前に何があったのだろうか。
呆然としていると、麗玲はクスッと笑った。
そのまま、少し離れた所に倒れている男性を指し示す。
「ほら、見て。とうとう神帝を討ったの。これで神界は私の物よ」
言いながらも嬉しそうに笑う麗玲が飛影と煌破を見る。
「あなた達も愚かよね。私達のこと、裏切らなければこの世界の好きな場所を領地としてあげたのに」
一度此方へ背を向け、麗玲は歩いていき神帝が座っていたであろう椅子に踏ん反り返る。
「今からでも遅くはないわ。もう一度私に忠誠を誓いなさい。そうすれば、……そいつらみたいに始末されずにすむわ」
麗玲が視線を向けたのは倒れている神蘭達で、麗玲の横に控えていた元総長の男が動き出していた。
「まずい! 」
それを見て舞達は神蘭達の元へ行こうとしたが、それより前に数人が立ちはだかる。
「ちっ、凍矢が言っていた通り、全員術中ってことか」
それが凍矢と同じように攫われていた空夜達であったことに、風夜が苦々しい表情をする。
「……とにかく、さっきと同じだ。まずは全員気を失わせるぞ」
「……そしたら、私がみんなを戻せばいいんだね」
飛影が言った後、綾が緊張したように言う。
それを聞きながら、舞はもう一度立ち塞がっている者達を見て、更にその奥に倒れている神蘭達を見た。
(急がないと……!! )
そう思うのと同時に、これから彼等を攻撃するのは倒す為ではなく、救う為なのだと自分に言い聞かせた。
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