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第11章

1
(……何だろう?何だか落ち着かないな)
光の街へ戻ってから数日。夜遅い時間になってきても寝付けなくて、舞は水でも飲もうかと食堂へ来ていた。
「あれ? 」
電気がついているのと中から数人の気配を感じて中へと入れば、そこには花音、聖奈、綾、聖羅の姿があった。
「舞も来たの? 」
「う、うん」
聖奈に声を掛けられ、舞は頷く。
「何だか胸騒ぎっていうのかな?落ち着かなくて……。水でも飲めば落ち着くかなって思ったんだけど……」
「舞ちゃんも?私も何だか今までなかったくらい落ち着かなくて……」
「……これから何が起きるのか、わからないけど、何だか凄く恐い……」
綾が呟くのを聞きながら、まだ一言も話していない聖羅を見る。
彼女は難しい顔をして、考え事をしているようだった。
「聖羅さん? 」
それに気付いた花音が声を掛ければ、彼女は我に返った。
「どうかしたんですか? 」
「えっ?……いや、何でも……」
そこまで言った時、食堂にまた誰かが入って来た気がして、視線を向けるとフラフラと聖姫が入って来ていた。
その表情は何処か弱っているようにも困惑しているようにも見える。
「……聖羅……神界が……、お父様が……」
「!! 」
近付いてきて泣きそうな声を上げた聖姫に、聖羅はハッと立ち上がると、聖姫を連れて慌ただしく食堂を出て行く 。
それがまるで舞達には聞かせたくない話をしに行ったように思えて、舞達も困惑したように視線を交わし合う。
嫌な予感は大きくなるばかりだった。
2
次の日、屋敷の中は慌ただしくなっていた。
「ねぇ、一体どうなってるの? 」
いつもと比べて人数が明らかに少なくなっている食堂に駆け込んで舞は声を上げた。
「昨日の夜まで確かにいたのに、今朝になったら誰もいないなんて……」
「……普通に考えたら、神界にすぐに戻らなければならない何かが起きたってことだろうが」
「でも、神蘭さん達が私達に何も伝える時間もないまま、戻らないといけないようなことって……」
舞、風夜、花音がそんなことを言っている間に、飛影と莉鳳が視線を交わし口を開いた。
「恐らく、魔神族が神界に攻め入ったんだ」
「えっ? 」
「……上層部が全員復活し、麗玲の記憶と力が戻った今、準備が全て整ったってことだろうな」
「……なら、私達も! 」
そう言って、舞は刹那を見る。
その視線を受けた刹那は、首を横に振った。
「……無理だ。……神界に繋げなくなってる」
「どうして!? 」
「……何かに妨害されてる。……時間を掛ければ、繋げられるかもしれないが」
「何か問題があるの? 」
「……一週間は掛かるな」
「そんなに!? 」
刹那の答えに花音が目を丸くする。
「どうするの?そんなに時間を掛けてたら、行けたとしてもどんな状態になってるか……」
「……方法なら、もう一つあるぞ」
その時、聞こえてきた声に舞達は声の方へ視線を向ける。
そこにはいつ入ってきたのか、煌破の姿があった。
3
「煌破……! 」
思っていたより早い再会に思わず驚く。
「……そのもう一つの方法というのは ?」
「一度、魔神族の領域へ行き、そこからゲートを使う」
「……そのルートで行くってことは、神界へ飛べないようにしているのは神族ってことか」
「でも、それじゃあ魔神族と先に会っちゃうんじゃないかな?」
花音が不安気に言うと、煌破は首を横に振った。
「いや、魔神族は全員、神界へ攻め入った」
「……何だか、誘われてるみたいだな」
「……誘ってきてるんだろ」
不快そうに言った風夜へ莉鳳が返す。
「神族からしたら、神子四人を残しておきたい。逆に魔神族からしたら、完全覚醒の前に始末しておきたい」
「……だから、神族は刹那の力を妨害し、魔神族は神界への抜け道を作ったって訳か」
「……因みに、奴等、お前達から攫った奴等も駒として使うようだったぞ。……お前達は運が良かったな」
煌破が言って既に助けられていた火焔と水蓮、力は取られたものの攫われることはなかった夜天、雷牙、光輝を見た。
「……って、それじゃあ、余計行かない訳にはいかないじゃない! 」
「だが、行けばもう戻って来られないかもしれないぞ」
「……それでも、行かないと」
正直、怖かったがその気持ちは押し殺して、舞は言う。
何より自分の中の〈天華〉の記憶が神界へ行かなければならないと言っていた。
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