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第10章

1
「久し振りだな、煌破。……元気そうじゃないか?」
「……嫌味か、それ」
倒れたまま顔だけを上げている煌破に視線を合わせるように座り込んだ飛影がニヤリと笑う。
それに返した煌破に飛影は笑みを消すと、首を横に振った。
「……いや、ただ意外だなと思っただけだ。……お前は、俺と天華を許すことはないと思ってた」
「……俺だって、許したつもりはない」
言いながら、ふらふらと立ち上がる。
そのまま何処かへ去ろうとするのを見て、舞は咄嗟に声を上げた。
「待って! 」
「……何だよ? 」
呼び止めたものの何を言うか考えていなかった為、聞き返されてもそれに何を言えばいいのかわからない。
「そんな状態で何処へ行こうっていうんだ? 」
舞が迷っていると、飛影がそう口を開いた。
「…………」
それに答えることもなく、立ち去ろうとする煌破の前を風夜が塞ぐ。
「まぁ、待てよ。そんなに急いで行くことないだろ」
「そうだよ。せめて、その怪我を治してからでもいいでしょ? 」
退くつもりはないらしい風夜と花音の言葉に、何故か水蓮、神蘭、封魔の三人が同時に溜息をついた。
2
「……はい、これで大丈夫」
そう言った花音に、煌破は身体の状態を確認するように少し動かした後、背を向けた。
「……礼は言わないぞ」
「いいよ。これは、私達を逃がしてくれたお礼だから」
「……ふん」
そう鼻を鳴らして、今度こそ行こうとした煌破に、飛影が再度声を掛ける。
「で、何処へ行くんだ?まさか魔神族の連中の所へ戻るつもりじゃないだろうな? 」
「……戻れるとは思っていないさ。凰呀からの報告がいってるだろうしな」
「……なら! 」
「……だが、俺はお前達と行くつもりはない。……其奴とは違ってな」
飛影をチラリと見て言うと、もう止められないようにか姿を消してしまった。
「……行っちゃった」
「……仕方ないさ。……少し考えたいこともあるだろうしな」
そこまで言って、飛影は花音を見た。
「とにかく、俺から礼を言わせてくれ。……ありがとう」
その声は少し嬉しそうに聞こえ、舞は飛影を見る。
表情には出ていなかったが、それでも幼馴染を助けてもらえたことは嬉しいようだった。
「そろそろ戻るぞ。あまりのんびりしていて、他の魔神族が来ても厄介だからな」
聞こえてきた刹那の声に頷き、舞はもう一度煌破が姿を消した辺りを見る。
「……次はもう少し話ができたらいいな」
「……そうだな」
何となく呟いた言葉は飛影にも聞こえいたらしく、そう返ってくる。
その直後、刹那の力が発動したらしく身体が光に包まれた。
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