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第10章

1
小屋を出てどの位経ったのかはわからないが、屋敷からはだいぶ離れた辺りで舞達は一度足を止めた。
「これからどうします? 」
「うーん、連れて来られた時、気を失っちゃってたからなぁ。此処から光の街へどう戻ればいいのかわからないし 」
「ねぇ、刹那は力を奪われていないんでしょ?なら、花音が空間の力の矢を使えば、場所を知らせることが出来るんじゃない?」
水蓮が言ったことに花音は少し考え込む。
「……確かに前にもその方法で居場所を伝えたことはあったけど」
そこまで言って、花音は辺りを見回した。
「此処だと魔神族に見つかっちゃうかも」
「……確かに隠れられるような所もないですね」
「でも、何もしないでいても時間の問題だと思うけど」
水蓮が言ったことに、花音はポーチから出した珠を弓にはめこむ。
「……どうなるかは運次第……か」
ぽつりと舞が呟いたのと同時に花音が放った矢が何処かへ消えていく。
矢が消えてから数十分。
舞は自分達を囲む幾つかの気配に、嫌な予感の方が当たってしまったと溜息をついた。
2
「追いついたぞ」
その声と共に舞達を囲むように魔神族が現れ、その中から一人の男が進み出てくる。
「……あなたは? 」
「十人衆五番手、凰呀」
そう言った男がふと自分の背後にいる魔神族達に視線を送り、それを受けた数人が舞達の前に何か大きなものを投げ捨ててくる。
「……ぐっ……」
地面に倒れ呻いたのは、舞達を逃がしてくれた煌破だった。
「「「!? 」」」
意識はあるようだが、身体中に傷や火傷を負っている。
「……これは、一体……」
「ふん。こいつはお前達を捕らえておきながら、報告もせず逃がしただけでなく、俺達の邪魔までした。……あの時の飛影と同じように愚かなことをした。だから、彼奴と同じ目にあわせてやったのさ」
その言葉を聞きながら、舞は倒れている煌破を見た。
(飛影と同じ目にあわせた?)
傷付いているその姿に別の姿が重なる 。
(そうだ。あの時も……この人が…… )
そんなことを思っていると、煌破に近付いた凰呀がそのまま踏みつける。
「……確か、お前と飛影は幼馴染だったな。……二人揃って俺らに歯向かうなんて、本当に愚かな奴等だ」
「うがっ……」
言葉と共に蹴り飛ばされた煌破の懐から何かが落ち、転がってくる。
「これは……、水蓮さん! 」
それが〈水〉の珠であったことに気付いて、舞は彼女に投げ渡す。
「返せ! 」
珠が水蓮の手に渡ったのを見た凰呀から雷撃が放たれる。
「きゃあああ! 」
「水蓮ちゃん!……っ! 」
雷撃を受け再び落としてしまった珠を花音が拾い上げ、その後弓を構える。
「……遅い!」
「きゃあああ!」
だが、矢を放つ前に電流を浴びせられ倒れてしまった。
3
「先輩!! 」
「後はお前だ」
駆け寄ろうとした舞は、その声に視線を向ける。
すると、凰呀は黄色の珠を手にその手を向けてきていた。
「……っ! 」
「させるかっ! 」
「何っ!? 」
起き上がった煌破が凰呀へ斬りかかり、そのまま抑えつける。
「行けっ!お前だけでも逃げろ! 」
「っ!煌破、貴様っ……! 」
煌破が叫んだ瞬間、魔神族達がざわつき、凰呀が睨みつける。
(そう言われたって、先輩達を置いてはいけないよ)
「……いいだろう、煌破。お前も此処で奴等と共に死ね!」
「……がああああっ!」
凰呀が持つ珠が光り、今までとは比べられないくらいの電流が煌破に流されるのがわかった。
「……っ!やめなさい!」
それを見て、舞は思わず声を上げた。
「やめるものか!こいつの行動は我々への裏切り!麗玲様、天奏様からも裏切るようなら、始末するよう言われている!」
「……っ!」
舞の中で再び〈天華〉だった頃の記憶と重なる。

煌破の屋敷で見た幼い頃の飛影との写真が浮かんでくる。
(……このまま、見捨てるなんて出来ない!……お願い、〈天華〉、力を貸して!)
煌破を投げ捨てた凰呀へ手を向ける。
そのまま身体に湧いてきた力を舞は凰呀に向けて放った。
4
「……やった……? 」
凰呀へ向けた力に手応えを感じて、舞は呟く。
その直後、飛びかかってきた何かに倒され視線を向けると、そこには傷付いた様子もない凰呀がいた。
「なっ……」
「何故、直撃した筈なのに無事なのかってか?危なかったが、〈盾〉は沢山あったんでな」
その言葉に魔神族の兵達を見れば、確かに人数が減っていた。
「……部下を……、身代わりにしたの ?」
「……の……外道が……」
「……ふん。何とでも言え」
聞こえてきた煌破の声にそう返し、ニヤリと笑う。
「さぁ、今度こそ……」
そこまで言って何かに気付いた凰呀が飛び退き、一瞬遅れて風の刃が走る。
何が起きたのかと身体を起こせば、飛び退いた筈の凰呀が左右から槍と剣を突き付けられていた。
「……そこまでだ」
「三人とも返してもらうぞ」
突き付けた二本はそのまま、低い声で言う飛影と封魔に降参というように凰呀が手を上に上げる。
「大丈夫か!? 」
それを見ていた舞に、いつの間にか近くに来ていた神蘭が声を掛けてくる。
「はい。……あ、でも、先輩達が」
「大丈夫だ。二人とももう気が付いてる」
そこに風夜の声も聞こえてくる。
見れば、彼と刹那に助け起こされている花音と水蓮がいた。
「……ちっ」
舌打ちした凰呀が飛影と封魔から逃れ 、距離をとる。
「……今回はここまでか。……今日のところは引き上げてやる」
「待て! 」
姿を消した凰呀に飛影は声はあげたが追うのは諦めたのか溜息をつくと、舞達の方へ、正確には煌破へ近付いていった。
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