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第10章

1
「……ここ何日間か、神界に行ってないみたいだな」
声を掛けてきた煌破に飛影は視線を向ける。
「何かあったのか?なんなら、俺が主で動こうか?」
「いや……」
飛影は首を振る。
「……俺がやる仕事だ。……神界に行ってくる」
「……あ、ああ」
急に動き出した飛影に煌破は少し戸惑っていたようだったが、構わず向かうことにした。
数日振りの神界。
飛影は神界の中枢へと忍び込んでいた。
視線の先では天華ともう一人の神子が話をしている。
天華の表情は背を向けられている為見えないが、もう一人の表情はわかる。
(……一体、何を話しているんだ?)
その表情は深刻そうなもので何の話をしているのか気になり、飛影はぎりぎりまで近付いていく。
すると、気配を消している飛影の耳に二人の声が聞こえてきた。
「……取りあえず、研究部の方へ回して調べてもらったんだけど」
「……あまりよくない結果でも出たの?」
「……ええ」
天華と話していた少女が手元の資料を見ながら話し始める。
その少女が話す成分の結果には心当たりがあった。
「…………」
数時間後、何もせずに戻ってきた飛影は魔神族の研究所にいた。
「……これだな」
様々な薬品が入っている棚から一つの瓶を取り出し、周りに誰もいないことを確認すると、持っていた瓶を懐へと素早くしまう。
そして、もう一度気配を探り誰の気配もないことを確かめると、素早くその場を離れた。
2
夜遅く、飛影は今度は神子達の居住区へ忍び込んでいた。
(……何とか侵入できたか、後は)
自分の気配を消し、何度か対峙したことのある天華の気配を探る。
(!!)
その時、僅かにだが自分と同じ気配を感じ、飛影はその気配のある場所へと向かった。
(……ここか)
その場所へと着き、中の様子を伺う。
見えたのはベッドの上に横になっている誰かに跨っている者が光る物を振り上げているところだった。
「……ん?……なっ!?」
ベッドで眠っていたらしい人物も異変に気付いたのか僅かな声の後、驚く声もする。
その声を聞いた瞬間、飛影は自分が隠れていたことも忘れて飛び出し、その二人の間に割って入っていた。
「……っ!」
振り下ろされた剣を受け止めれば、前と後ろ、どちらからも驚いたのが伝わってくる。
「なっ……!?」
「……何のつもりだ?」
その問いには答えず剣を弾き返すと、後ろで驚いていた天華に向き直り抱えあげる。
「えっ?なっ?ちょっと……?」
戸惑ったような声が聞こえてはきたが、それに構わず近くの窓を突き破ると、そこから飛び降り走り出した。
3
「一体、何のつもり?」
中枢区から離れ、身を隠した森の中、天華が警戒した声で問いかけてくる。
「さっき私を襲ってきたのも、あなたと同じ魔神族じゃないの?」
「……まぁ、そうなんだがな。……今回のようなやり方、俺は好きじゃないんだよ」
言いながら、懐から持ち出してきた瓶を取り出し、天華に差し出す。
「……何よ、これ」
「お前が受けている毒の解毒剤だ」
「……解毒剤って……、どうしてあなたがそんな物を私に……」
「言っただろ?今回のような卑怯な手段は嫌いだって」
そう返せば、天華は飛影が渡した瓶をじっと見つめていた。
「……まぁ、敵の俺が渡した物をすぐに信用は出来ないだろうけど、それは本当に解毒薬だ。……今だけでいいから、信じてくれ」
そう言うと、飛影は踵を返した。
「……帰るの?」
「……いや、少し辺りを見てくる。戻ってくるまでには飲んでおけよ」
言って歩き出す。
彼女から少し距離を置いたところで立ち止まれば、殺気を感じる。
視線を向ければ、先程天華を襲撃してきていた魔神族がいた。
「……飛影、お前、一体何のつもりだ?」
「……それはこっちの台詞だ?何故お前が此処にいて、天華を狙ってきた?凰呀」
睨み付けて言えば、それより強い視線が返ってくる。
「答えになってないな。お前がもたもたとしているから、麗玲様が手を貸してくださったというのに」
「……それで、毒を使ったのか」
「そうだ。……それなのに、お前は解毒薬を盗み出し、あの女に渡した。それがどういうことかわからない訳じゃないだろ」
その言葉に飛影は冷笑を浮かべる。
「……俺は裏切ったも同然ってか?」
「……そうだ。今、戻って解毒薬を取り戻してくれば、見逃す」
「……断ると言ったら?」
「ならば、裏切り者として始末する」
強まる殺気に、飛影は少し目を細めた。
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