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第10章

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花音を追い掛けた舞が追いついたのは光の塔がある丘だった。
「……先輩があんなことするなんて、珍しいですね」
「……あはは、……うん、自分でもそう思うよ」
声を掛けた舞に花音は苦笑する。
「でも、何だか許せなかったんだよね。……言った聖姫さんも、言い返さなかった封魔さん達も」
「……もしかしたら、先輩の前世だった〈光鈴〉の影響もあったのかもしれませんね。……私の中の〈天華〉の記憶でも〈光鈴〉は命を軽視することを嫌っていたから」
「……そうなのかもね」
「まぁ、私も正直頭に来てたし、先輩が動かなかったら、叩くくらいしてたかも」
「……ふふ」
舞が言ったことに花音は笑う。
その時、ふともう一つ誰かの気配を感じた。
「……誰!?」
振り返れば、一人の少年がいた。
「……襲撃があったばかりなのに、随分無防備だな。……〈天華〉と〈光鈴〉の転生者」
「「!!」」
口を開いた少年に、舞と花音は身構える。
「おっと、今日は戦うつもりはない。此処にいる全員を相手にするつもりはないしな。……ただ」
そこまで言って、懐から水色の珠を取り出す。
「……お前達には個人的に用がある。……俺の屋敷に来てもらおうか」
その言葉と同時に珠が光る。
それと共に舞と花音は水球の中に閉じ込められ、意識を失った。

「……っ」
意識が回復する感覚があり、舞は目を開ける。
「舞ちゃん、大丈夫?」
先に目が覚めていたらしい花音の声に身体を起こすと、そこは何処かの部屋の中だった。
「……先輩、私達って捕まったんですよね?」
「……その筈だけど」
自分達がいるのは牢ではないことを不思議に思っていると部屋の扉を開き、二人を攫った少年が入ってきた。
「目が覚めたようだな」
「あなたは一体誰なの!?……私達に用があるって言ってたけど、何の用があるの?」
その舞の言葉に、少年は少し考えるような仕草を見せる。
「……覚醒したとは聞いていたが、全ての記憶が戻った訳ではないのか」
ポツリとそんな事を呟き、舞達の方を見る。
「俺は魔神族の十人衆の一人、煌破。麗玲様からは〈水〉の珠を託された者だ」
「ってことは……」
「水蓮ちゃんの……」
「……ああ、珠と共に預かった奴がそんな名だったか。……まぁ、心配するな。捕らえてはいるが、俺は破皇のようなことはしない。最もお前達次第だがな」
そう言った煌破を舞は睨むように見る。
「だったら、早く目的を言いなさいよ」
「今のお前らにはあまり期待は出来なさそうだがな。……彼奴を誘き寄せる餌にはなりそうだが、それはまだ後だ。……時間をやる。屋敷内なら自由に動いて構わない。……〈天華〉や〈光鈴〉の頃を思い出せ」
そう言い放ち、部屋を出て行った煌破に正直戸惑いがあった。
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