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第7章

1
(もしかして、この二人が……)
舞はまだ会っていなかったが、目の前にいる二人が光の街で倒れていた人物達で、雷牙の〈本当の〉両親なのだろう。
「……俺は……」
「いいのよ。無理だとは思ってたし、私達が来たのもあなたの代わりをするつもりだったの」
「……どちらにしろ、お前達は失敗だけどな」
ポツリと風夜が言ったことに何故言い切れるのかと視線を向ける。
「……もうそろそろいいか? 」
「えっ? 」
「はっ? 」
次いで聞こえた封魔の声に、舞も飛影も間抜けな声を上げてしまう。
見れば、身体を起こしている封魔と目が合った。
「えっ?ええっ? 」
それにもう一度声を上げた舞を見て、花音は苦笑する。
「……ごめんね。実は……」
そう切り出した花音が話し始める。
彼女が言うには封魔は今朝、爆発音が鳴るより前に目覚めていたということだった。
「その後にあれだけの音がしたんでな。何か動きがあると思って、まだ気がついていないことにしたんだよ」
「だが、それじゃ……」
「大丈夫。……魔神族の所には神蘭さん達が行ってくれてるからね」
自分達の国が攻撃されると言いたかったのだろう、夜天に花音が返す。
「だから、他の奴等は此処に来ないのか。だが、此処に入り込まれていたらどうするんだ?力を奪われた奴等はこの街にいるんだろ?そこを攻められたら?」
飛影の言葉に風夜がふっと笑う。
「だから、俺は残ったんだよ。封魔もいるしな」
「……意識が戻った途端、すぐに戦力として数えるのかよ? 」
そんなやり取りを聞きながら、舞は雷牙の両親だと言っていた魔神族の方へと視線を戻した。
雷牙達の表情は冴えないが、魔神族の二人の表情はどこか安堵しているようにも見えた。
(それに雷牙達が無理だったら自分達が封魔の始末をするみたいなことを言ってたけど……)
封魔が気が付いたからなのか、それとも他に理由があるのかはわからなかったが、今は何らかの行動を起こす様子はないようだった。
そんなことを舞が思っていると、風夜が彼等に近付いていく。
その手に持っている柄から長い鎖のようなものが伸びていく。
「……まぁ、ともかく、神蘭達が戻って来るまでの間、一度拘束させてもらうぞ」
その言葉と共にその鎖が光輝、雷牙、夜天も含めた五人を捕らえていった。
2
神蘭達が戻って来るまでの間、舞達は場所を光輝の執務室へと移していた。
「いいのか?あいつら、拘束しているとはいえ、あの部屋においてきちまって……」
「……一応、結界も張ってあるから大丈夫だろ。抵抗するならもうしているだろうしな」
「ところでさ」
舞はそこで聞きたかったことを聞こうと口を開いた。
「雷牙って、雷の国の皇子なんでしょ?……どうして、魔神族が両親なの? 」
「雷の国の王と王妃とは血の繋がりがないんだよ。……まだ赤子の時に城の前で捨てられていたらしい」
「捨てられてた? 」
「ああ。……それで後継のいなかった雷の国の王と王妃は雷牙を自分達の子にしたのさ」
「……その本当の両親が魔神族とは、皮肉なものだな」
風夜の話を聞いて、飛影が呟いた。
「当然、育ててくれたら両親へ恩はあるだろうが、本当の両親に会いたいっていう気持ちもあるだろうからな」
そう言った時、不意に風夜が顔を顰めたのがわかった。
「風夜? 」
「どうした? 」
それに花音と封魔が声をかけると、彼は顔を顰めたまま続けた。
「っ……、誰かが結界を破ろうとしてる」
その言葉にまさかとは思いながらも、舞は雷牙達を閉じ込めている部屋へと走り出す。
数秒後、その部屋の扉を開いた時には誰の姿もなかった。
「……いない!? 」
部屋の中に変化はなく、ただ雷牙達だけがいない。
「……やられたな」
後から来た飛影が呟く。
「でも、一体誰が風夜の結界を……」
花音が言った時、慌てたように近付いてくる二つの足音が聞こえてきた。
「「大変!大変だ!」」
「蒼牙くん、紅牙くん!」
「どうしたの?」
息を切らせて走ってきた二人に、舞は声を掛ける。
「……ちゃん達が……れ……た」
「……もう一回言って?」
よく聞こえていなかった為、聞き返す。
「だから!火焔兄ちゃん達が……」
「連れて行かれちゃったんだよ!」
「「「「「……!! 」」」」」
思いもしていなかったことを言われ、舞達は顔を見合わせた。
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