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第1章


次の日、神蘭が鈴麗と共に養成所の演習場へ来ると、そこは何だか騒がしかった。
「何かあったのかな?」
「さぁ……」
そう呟いて神蘭が首を傾げていると、近くにいた訓練生達の声が聞こえてくる。
「おい、聞いたか?また、一つの村が襲われたらしいぞ」
「ああ。それもこの養成所の近くだろ?だから、教官達も軍の方に確認しに行ってるって」
「その襲撃した奴等って、最近よく話題になってる仮面を付けた正体不明の奴等だろ」
そんな会話に神蘭が視線を向けると、話しているのは男子三人だった。
「ねぇ、それっていつの話!?」
「「「!!」」」
突然割って入った神蘭を三人が驚いたように見てくる。
だが、神蘭はそれを気にしないで再び問い掛けた。
「ねぇ、いつの話なの?その村は何処?」
「……あ、ああ。襲撃されたのは、昨夜だよ。村は此処から南西に二km位しか離れていないらしい」
「……ねぇ、それって何だか段々此処に近付いてきてる気がしない?」
一人の少年が言った言葉に、鈴麗が不安そうに呟く。
「今は教官達もいないし、もし今襲撃されたら?」
「大丈夫だろ。教官達もそう長くは留守にはしないだろう」
先程とは違う少年がそう言った時、教官が走ってくる。
「今日の演習は中止だ。全員、寮へ戻り、身体を休めておきなさい。それと単独行動は控えるように」
硬い表情でそう言うと教官に、神蘭は胸騒ぎがした。
2
「ねぇ、神蘭」
寮の部屋へ戻ってきてから、鈴麗が声を掛けてくる。
「何?」
「教官の様子、おかしくなかった?」
「鈴麗もそう思った?」
「……ええ」
教官の態度に違和感を感じたのが自分だけではないと知り、神蘭は自分の中での胸騒ぎが大きくなった気がする。
そして、それは時間が経つほどに大きくなっていく。
(一体、何が起きようとしているの?)
そう思いながらも、何も起こらないことを祈る。
だが、その願いが叶わなかったと知ったのは、それから数時間後、眠りについているような時間帯になってからだった。
ドガアァン
「「!?」」
すっかり暗くなり辺りが静まり返ってきてから、爆音と共に激しい揺れを感じて、神蘭と鈴麗は飛び起きた。
カーテン越しに外が紅く染まっているのがわかり、何かあったのだと部屋を出る。
今の音と揺れで、他の訓練生達も目が覚めたのか、寮の中は騒がしくなってきていた。
「外へ行ってみよう」
「ええ」
中にいても状況はわからないだろうと、鈴麗に声を掛けて寮を出る。
外へ出ると、養成所のあちこちから火の手が上がっていて、何かがぶつかり合うような音が聞こえてきた。
「おいおい、マジかよ」
「まさか、本当に此処にも現れたっていうのかよ?」
その時、背後から聞こえてきた声に振り返ると、そこには三人の男子がいた。
「あなた達も様子を見に来たの?」
「ああ。だが、この状況は……」
そう言った時、何処からか飛んできたエネルギー弾が、神蘭達の近くの地面を抉った。
「まずい。ここを離れるぞ」
この場所は危険だと判断したらしいその言葉に、神蘭達は寮から離れるように走りだした。
3
「「「「「!!」」」」」
寮を離れてどの位走ったのか、神蘭達は足を止める。
五人の前には、仮面とフードを身に付けた一人の男が立っていた。
前に神蘭の住んでいた村を襲ってきた者達もその二つは身に付けていたが、その時の物より上質なもののような気がする。
何よりその服についている階級章のようなものが今までとは違うことを示していた。
(この男、只者じゃない!此処にいるのは、まずい気がする)
何故かはわからないが、雰囲気が
尋常でない気がして、近くにいた鈴麗の手を掴む。
「神蘭?」
「逃げよう。あの人、なんか危ない気がする。あなた達も逃げて」
神蘭は男子三人にも言うと、鈴麗の手を引いたまま、走り出す。
「逃がさんぞ。我々の邪魔になり得る者は、早めに消し去る」
後ろから聞こえてきたその声に、神蘭は走るスピードを速めた。
「はぁ、はぁ……」
走っている内に一緒にいた鈴麗達とは逸れてしまったが、何とか男から逃れることは出来たのだろうと立ち止まり、息を整える。
(あの四人は、寮にいた他のみんなは……)
そう思った時、近くの壁が吹き飛び、神蘭の近くに誰かが転がり出てきた。
それはこの養成所の教官の一人で慌てて駆け寄る。
「教官、どうしたんですか?しっかりしてください!」
声を掛けても、反応はない。
(これは……、そんな)
よく見れば、その教官の身体は傷だらけで、一番酷いものからは血が止まることなく流れ出ていて、もう助からないだろうということはわかった。
「どうして?」
「ん?何だ?今度は只の小娘か?」
「!!」
聞こえてきた声に神蘭が視線を向けると、階級章を付けた男がいて、血が滴り落ちる剣を持ち、近付いてきていた。
「まぁ、いい。今度はお前の番だ」
そう言った男が剣を振り上げる。
逃げなくてはならないと思いつつも、向けられた殺気で動けない。
「お待ちください!」
その時、そう声が聞こえて、一人の人物が現れた。
「月夜……」
仮面は付けているが、間違いはないだろう。
「どうした?お前の持ち場は此処ではないだろう?」
「はい。ですが、その女は私にやらせてもらえませんか?」
「ほぅ」
「この女は、あなたが直接手を下す程の者ではありませんよ」
そう言って、月夜が剣を抜く。
「伏せろっ!!」
その時鋭い声がして、エネルギー弾が飛んでくる。
言われるまま身を伏せた後、飛んできた方向に視線を向けると、此方を鋭い視線で見る封魔の姿があった。
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