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第6章

1
「花音、悪い!すぐ来てくれ! 」
「えっ!? あ、うん」
封魔を連れていないことを疑問に思い問い掛ける間もなく、飛び込むように入ってきた風夜が花音を連れて行ってしまう。
それが気になり追い掛けると、二人は一つの部屋へと入っていく。
同じように入ろうとした舞達を止めたのは、星夢だった。
「待ちなさい!……あなた達は部屋でちゃんと休んだ方がいいわ。心の整理をつける時間も必要でしょうし、……今できることは何もないわ」
舞や聖奈、綾、神蘭達、過去の闘神達と視線を移しながら言う。
「……気になるのもわかるけど、今は花音と刹那に任せておきなさい」
そう言われ、扉を開けることは許さないというように立ち塞がれてしまえば今は諦めるしかなかった。
それでもこのまま休む気になれず、光輝に用意してもらったのは大部屋で、過去の闘神達と簡単な自己紹介を済ませる。
六人は蒼魔、怜羅、光月、星牙、月葉、聖斗と名乗り、蒼魔以外は神蘭達の元上司、蒼魔は封魔の兄だということだった。
「……ところで、今の状況はどうなってるんだ?……正直、まだよく状況が掴めてなくてな」
「そうね。随分と長い間、閉じ込められていたみたいだし。……今、魔神族と戦っているなら、数百年前の戦いでは本当の決着はつかなかったってことなんでしょうけれど」
「ええ。……数百年前は天華が封印する事で戦いを終えたのよ」
星牙と月葉に聖羅が答える。
「……その時、総長は? 」
「……普通だったと思うけど……」
「……違う」
不意にそう呟いたのは綾だった。
「……〈私〉と〈光鈴〉を殺したのは封魔だったけど、……確か、其処にもう一人いたの」
言葉の前半を聞いて、蒼魔達が目を見開く。
そんな彼等に構わず、綾は頭痛がするのか、頭を押さえながら続けた。
「……はっきりと見た訳じゃないけれど、……彼処にいたのは、総長だったわ。……間違いない。……あの時、様子の可笑しかった封魔を操っていたのは総長だった。……花音に聞いても恐らくそう答える筈。……〈光鈴〉としても姿を見ているか、声を聞いているだろうし、……封魔本人からも話を聞いてると思う」
綾の言葉にやはり一番状況がわかっているのは封魔で、彼から話を聞かなければわからないことが多い。
だが、連れ戻しに行った刹那が姿を見せないことや、治癒能力がある花音が連れて行かれたこと、星夢の言葉から今話せるような状態ではないのかもしれない。
そんなことを思っていると、花音を連れて行った風夜が部屋に入ってくるのが見えた。
「風夜、封魔は? 」
まず声を掛けたのは神蘭で、話し掛けられた風夜は少し難しい表情をしている。
「……急所は外して、なんとか即死だけは免れたみたいだけど、……どうなるかはわからないな」
「……一体、あの後、何があったんだ? 」
「裏切り者がもう一人いたんだよ。そいつの攻撃でな」
問い掛けた龍牙にそう答え、風夜は手を左肩から斜めに動かした。
「俺と刹那が着いたとほぼ同時にこうだ。どうにか隙をついて連れてはきたけど、傷はこれだけじゃない。……厳しいだろうな」
「……っ!! 」
それを聞いた神蘭が飛び出していき、鈴麗が追っていく。
「……今度は止めないのね? 」
「どうせ休む気はないんだろ?……なら、好きにさせるさ。……お前らも気になるなら、行ってきたらいいだろ。意識はないが、今会わないともう会えないかもしれないしな」
「……嫌なこと言うのね。……前のあなたはそんな言い方しなかったと思うけど」
「あくまでも可能性の話だよ。……此処でやきもきしているより、状況を知って判断した方がいいだろ? 」
聖羅にそう返すと、風夜は踵を返した。
2
舞達が先程は星夢に止められた部屋まで来ると、今度は中に入る事が出来た。
部屋の中には、刹那が直接連れてきたのだろう封魔が寝かされていて、その近くに疲れた様子の花音と先に部屋を出ていた神蘭と鈴麗の姿があった。
「先輩」
「……皆も来たんだね」
「どうなんですか? 」
封魔を見ながら問いかけると、花音の表情が曇る。
「……あまりよくはないよ。出血も止まらないし、……私の力が追いついてない。このままじゃ……」
悔しそうに呟く花音の顔色もあまりよくない。
(先輩も疲れてるよね。蒼魔さん達に力を使ってからそんなに時間が経ってないのに、力を使い続けているんだもの)
それでも、封魔の状態はあまりよくならないのだ。
その時、誰かの溜め息が聞こえてきた。
「……刹那くん? 」
「……この状況だと、仕方ないかもな」
部屋に入ってきた刹那が花音に少しどいているように言って、封魔に手を翳す。
見ている限りでは何の変化もなかったが、何らかの力が発動したのは感じた。
「……何をしたの? 」
「こいつの時間の流れを変えた」
それを聞いて、舞は聖奈や綾と顔を見合わせた。
「時間の流れを変えたって……」
「正確には時間の流れを止めたのと同じくらいまで遅くした。これで容態が悪くなることはない。花音が回復するまでこの状態にしておいて、後で花音の時間も少し操作すれば、短時間で傷を癒すことも充分可能だ」
「だが、そんなことをしたら、歪みが発生するんじゃないのか? 」
「それは俺が調整するから大丈夫だ。ただ、こんな事をするのは今回限りだけどな」
飛影の問いに刹那が答える。
「……本当なら時間を操作することは一族の中でも禁忌にされているんだよ。ばれたら追放にされるくらいのな。……それと」
その言葉に続けて伝えられたのは、時間操作を行っている間、刹那はそれに集中しているということ。
もし襲撃があったとしても、空間操作は出来ず、他の場所へ移動することが出来ないということだった。
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