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第6章

1
「……悪いな。お陰で楽になった」
礼を言う封魔に花音はなんてことないと笑う。
「さてと、戻らないとな。あいつが報告したら、連中は間違いなく水晶を狙う」
「だな。雷牙達もいるし、急がないと」
「待って! 」
花音が封魔の治療を終えたところで、戻ろうとした三人に舞は声を上げた。
「舞ちゃん? 」
「私も行きます」
「私も! 」
舞と綾に視線が向けられる。
「水晶に閉じ込められている人達を助けるには、天華と光麗の力が必要。前にそう言ってましたよね、聖羅さん」
「ええ」
確認するように舞が言うと、聖羅は頷いた。
「なら、いずれ私達はそこに行かないといけなくなる。……それが思ったより早くなっただけですよ」
「でも、まだ実戦で使ったことはないでしょう」
「力の使い方は教わりました。それに水晶を魔神族から守り抜く方が難しい。だから、従っていたんじゃないんですか? 」
それに封魔が頷く。
「なら、やるしかないでしょう。魔神族が水晶を狙う前に、中にいる人達を助け出し、此処に戻ってくる。……チャンスは今回だけ。行くしかないよ」
自分にも言い聞かせるように言う。
それに反対する者はいなかった。
2
数十分後、舞達は以前手に入れた刹那の力の入った玉を使い、過去の闘神達が閉じ込められている水晶のある洞窟へ来ていた。
覚悟を決めてきてはいたが、いざ水晶の前に立つと緊張が増してくる。
(失敗は許されない)
気持ちを落ち着かせようと大きく深呼吸する。
気持ちが落ち着いたところで、舞は綾と視線を合わせると頷きあった。
もう一度深呼吸してから、水晶へ手を翳し、力を使うことに集中する。
水晶に力を流すイメージで、綾とも力のバランスが崩れないように調節する。
まだ助け出せない内に魔神族が来る可能性もある為、急ぐ必要もあったが、力を暴走させても意味がない。
迅速にかつ慎重に行わなければならなかった。
どの位の時間が掛かったのかはわからなかったが、手応えを感じた時には舞の目の前にあった筈の水晶はなくなっていた。
閉じ込められていた闘神達の身体は、地面に横たわっている。
まだ意識は戻っていなかったが、彼等の身体を淡い光が包んでいることから花音が〈光鈴〉の力を使っているのがわかる。
それならば、目覚めるのも早いだろうと、少し疲れた身体を休ませつつ待つことにした。
「「「うっ…!! 」
「「「っ……!」」」
花音も力を使うのをやめて間もなく、僅かに呻いた過去の闘神達が目を覚まし出す。
「蒼魔様! 」
まず目覚めた青年にそれまで見守っていた楓を駆け寄っていき、神蘭達もそれぞれ親交があったのだろう者に近付いていく。
それを見て、舞は綾と視線を交わし、成功したことに安堵の笑みを浮かべた。
そんな中、誰も近付かなかった一人の闘神がふらつきながらも立ち上がり、逆に誰かへと近付いていく。
その先には封魔といつの間にかいた一人の魔神族。
それに舞はぎょっとしたが、全然気にもしていないらしい彼は、目の前にいる魔神族の仮面に手を伸ばし、それをとって投げ捨ててしまった。
「よ、白鬼!何、お前だけこんな仮面をつけてるんだ? 」
同時に言われた言葉に、神蘭達も驚いたように視線を向ける。
「……光月様、相変わらずですね。説明は後でしますよ」
「そうか? 」
そう返し、今度は封魔を見る。
「……悪かったな。今まで大変だっただろ」
掛けられた声は何処か優しく、兄が弟に掛ける言葉のようにも思えた。
「……はいはい、そこまで」
その時、手を叩いて聖羅が言う。
「色々と積もる話もあるでしょうし、私も話したいことはあるけど、此処が魔神族の領域だってこと忘れないで。……奴等が来る前に此処を離れましょう」
「っと、そうだった」
此処にいるのは危険だと思い出し、舞は花音を見た。
「先輩達も……、今度こそ一緒に来ますよね? 」
過去の闘神達が動けない状態でこちらにいたから、魔神族に従うしかなかったことはもうわかっている。
それが解決したのだから、もういいだろうと声を掛けると、花音は困ったように笑った。
「でも、私は……」
「光の街なら大丈夫ですよ。……先輩が全部直してくれましたから」
「そうだよ、花音。……今までのこと全部ちゃんと話してくれれば、それでいいから」
聖奈と綾が言う。
「とにかく今は早く戻りましょう。蒼魔達も力を使ったあなた達も休まないと」
聖羅がそう急かした時、何かに反応した封魔が自分の左腕から腕輪を外す。
何だと思った時には彼は全員を覆うように結界を張っていて、そこに洞窟の壁を突き破って飛んできたエネルギー弾が激突した。
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