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第6章

1
数分後、舞は聖奈、綾と共に再び光の街の中を散策していた。
「それにしても、あれだけの被害が本当に何もなかったみたいだね」
「……神界の神子で戦闘員でもない力でこの力……、私達の力が目覚めたらどうなるんだろう? 」
ポツリと呟いた聖奈の言葉には舞も同感だった。
目覚めかけている舞の力でも、制御が出来ていない状態で、かなり消し飛ばしていたのだ。
完全なものになった時は相当なものになるだろう。
(力を手に入れたとしても……)
それを使いこなせたとして、戦わなければならないということに不安が残る。
(花音先輩は最初どうしたんだろう?どうやって魔族との戦いを乗りきったのかな?戦うことが怖くなかったのかな? )
聞いてみたいが、今、花音は近くにはいない。
神蘭達が花音と出会ったのは戦いの途中だと言っていたし、光輝も花音がこの世界に来て暫くしてからの合流だと言っていたから、飛ばされてきたばかりの頃のことは知らないだろう。
勿論、風夜には聞けないし、火焔達は途中でいなかったり、合流が遅い。
となると、話を聞けるのは一人しかいなかった。
2
「花音がこの世界に来た頃の話? 」
書いていた報告書から夜天は舞達の方へ視線を移す。
「うん。……先輩も最初は何の力もなかったんでしょ?この世界に来たばかりの頃から力が目覚めた頃のこと、一年前の戦いの時のことを知りたいの」
聖奈と綾も同じように聞きたいと頷く。
「……といっても、俺もずっと一緒にいた訳じゃないぞ」
「知っていることだけでもいいからお願い」
そう言うと、夜天は深い溜め息をついた。
「……俺が花音と初めて出会ったのはこの世界に来て数日後だ。その少し前に、風夜が能力を使うのを見て、花音は怖がっていたらしい」
「そうなの? 」
「ああ。……まぁ、力を使うのを見たのは初めてで、驚いたのもあっただろうが。……それから、花音の力が目覚めたのはもう少し後のことで、完全に自分のものにしたのは、風夜に力の使い方を教えてもらったからだと言ってたな」
「……花音も教えてもらって、力を自分のものにしたのね」
夜天の話を聞いて、綾が呟いた。
「それ以外にも戦いが進むにつれて、花音は自分なりに強くなろうとしてたみたいだな。直接聞いたことはないけど、……存在が変わり強くなっていた風夜と対等な関係でいたかったらしい」
「それって、ただ守られるような関係じゃ嫌だったってことだよね」
誰に言う訳でもなく、舞は呟いて自分はどうしたいのかを考えてみる。
戦うことはやはり怖い。
強大な力を使うことにも不安がある。
それでも、麗玲達が全ての世界を自分達のものにして支配しようというのなら、それを放っておくことはできない。
それにまだ出会ったばかりの仲間達だが、自分の中にいる〈天華〉が失いたくない大切な者達だと言っている気もする。
横にいる聖奈と綾の表情を見ると、二人の中でも答えは出ているようだった。
「それで答えは出たのかしら? 」
舞達が聖羅の所へ行くと、待っていたというように声を掛けてくる。
「はい。……私は、……目覚めかけている天華の力を完全なものにしたい。……麗香と……麗玲と戦える力がほしいんです」
「私も……戦います。舞一人に全て任せて、自分は引っ込んでいるなんて出来ません」
「……私は正直、今でも迷いはあります。……でも、今回の街への襲撃みたいなことはもう起きてほしくない。今回は花音のお陰で被害はなくなったけど、次もこうとは限らないのなら、少しでも守れる力がほしいです」
舞、聖奈、綾の言葉を聞いていた聖羅がふっと笑みを浮かべる。
「……あなた達なら、そう言うと思ってたわ」
そう言った聖羅の表情と声は嬉しそうなものだった。
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