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第6章

1
「何処も元通りになってる……」
襲撃の後、光の街の中を見て回っていた舞は、襲撃前と変わらない様子にポツリと呟いた。
「……これが、治癒と再生の神子の力か」
「そうね。……最も、その力を暴走させたからこそ、此処までの状態になったのでしょうけど」
「暴走ね。……まぁ、あの被害じゃよかったのかもしれないが。俺達が魔神族に与えた傷まで回復されちまったからな」
感心するように呟いた飛影の横で、星蓮の言葉を聞いた莉鳳が溜め息をついた。
「それは仕方ないわ。……寧ろ問題なのは、魔神族の上層部が揃ってしまったこと。これで向こうは戦いの準備が完全に出来てしまった。……一度、報告に戻った方がよさそうね」
「……確かに。俺も一度戻るか。……魔神族については、魔族の上層部も警戒しているからな。……少し不安なこともあるが、大きな動きがある前に報告しとかないとな」
星蓮と莉鳳が少し別行動をとると早速出掛けて行く。
二人が去っていくのと入れ替わるように夜天が走ってきて、彼から光輝の意識が戻ったことを告げられた。
2
飛影と呼びに来てくれた夜天と共に屋敷の光輝の部屋へ行くと、彼はベッドの上で身体を起こしていた。
「……もう大丈夫なのか? 」
同じように連絡を受けたらしい神蘭が聞き、光輝は頷く。
「ああ。……でも、不思議だな。俺、塔の上階から落とされた筈なのに、傷一つないなんて……」
「……それは……」
「……花音だよ」
夜天が言ったことに、光輝は少し目を開いた。
「姉上が……」
「うん、そうだよ」
「それより、彼処で何があったのか聞かせてもらっていいか? 」
龍牙に光輝は一つ頷いた。
「ああ。あの時、俺は夜天と一緒に避難誘導をしていたんだ。その途中で白亜がやけに塔の方を気にするから、何かあったのかと思って、様子を見にいったんだ。そしたら、誰かが進入した形跡があったから、確かめようと塔を上って行って……」
「花音達と会ったのか? 」
「俺が着いた時には天奏って奴もいたけどな。そいつが俺を殺せっていって……。そういえば……」
そこで光輝は少し考えるようにする。
「何か妙なことを言ってたな」
「妙なこと? 」
「ああ。……確か、閉じ込めた連中もただではすまないとか……」
「「!! 」」
それを聞いて、舞は飛影と顔を見合わせる。
光輝や夜天からしたら何のことかわからないだろうが、舞には心当たりがある。
神蘭達の様子を見ても、それは聖奈と綾を助けに行った時に見付けた過去の闘神達のことで間違いなさそうだった。
3
「それってやっぱり、この前見た水晶に入った人達ですよね? 」
「ああ、間違いない」
確認するように見た舞に神蘭が頷く。
「何だ?何のことかわかるのか? 」
「……この間、魔神族のアジトに行った時に見付けたんだよ。……俺達の一代前の闘神達が水晶に閉じ込められているのをな」
「……それなら、その人達を助ければ花音達が戻ってきたりしないの? 」
「その可能性はあるかもしれないけど……。その水晶が魔神族によるものだとしたら……」
綾の言葉に、聖羅は彼女と舞を見た。
「彼等を助け出すには、天華の力と光麗の力が必要になる。……あなた達の力が目覚めてもいない今はまだどうしようもないわ」
「……といっても、こいつの力は目覚めかけているみたいだがな。……まぁ、制御やコントロールは全然みたいだけど」
花音と再会直後、森を吹き飛ばした時のことを言っているのだろう飛影に舞は苦笑した。
「とはいえ、魔神族の力が全て戻り、復活を許してしまった以上、此方も今のままでは戦力的に不安があるのも事実。……あなた達の力が目覚めたり、蒼魔達に加わってほしいのも事実」
聖羅は少し考えるようにしていたが、すぐに口を開いた。
「もしあなた達が力を望むなら……、戦う覚悟があるのなら、私があなた達に力の使い方を教えるわ。……強制はしない。あなた達次第よ」
舞は聖奈、綾と視線を交わし合う。
二人からは迷いや戸惑いが感じられ、舞自身も今すぐには決断ができない。
「少し考えさせてもらっても、いいですか? 」
少し時間がほしいと言うと、聖羅は頷いた。
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