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第4章

1
舞達が無事に脱出したのを確認して、花音はほっと息をつく。
その時、何処かへ行っていた封魔が戻ってきた。
「……さてと、聞かせてもらおうか?」
「えっと、何をですか?」
「……今回の件、俺は何も聞いていなかったが」
「そういえば、俺のことも弾いて動いてたな」
封魔だけでなく雷牙にまで言われて、花音は誤魔化すのは諦めた。
「……ごめんなさい。……何も知らない二人が此処にいたら、どんな目に合うかと思ったら、何とかしないとって思って。元の世界に戻したところでまた連れてこられるなら、舞ちゃん達といた方がいいかなって」
花音が言うと、封魔は大きく溜め息をついた。
「お前、自分の状況よくわかってないだろ?あまり奴等を刺激するようなことはするな。……奴等は人を人形のように扱うことも厭わない。……その人物の人格がどうなろうと力だけが使えればいいっていう連中だ。そのくせ、人形になった奴にはその時の記憶は残る。……俺だからそれでもまだ保ったが、花音、お前なら壊れかねないぞ」
封魔が言った時、白鬼が来るのがわかった。
「封魔、お前呼ばれてるぞ。花音、お前もだ」
「えっ?私も?」
「……まぁ、そうだろうな。……白鬼、少しの間、こいつらを任せる」
「……ああ」
白鬼が頷くのを確認すると、封魔は花音を促し歩き出した。
2
封魔と共に訪れた部屋には麗玲と天奏の姿の他に一人の男の姿もあった。
「今度は何故呼び出されたか、わかるかしら?」
声を掛けてきた天奏は口にこそ笑みを浮かべてはいたが、目は笑っていない。
その横にいる麗玲も苛立っているように見えた。
「……さあな。わかるわけないだろ」
「あくまで惚けるつもり?……天華の転生者に続いての星鈴と光麗の転生者が逃げ出した件、あなた達の仕業だと思っていたんだけど?」
「……知らないな」
「……そう。これを見ても、そんなことを言えるかしら?」
言って、天奏が横に立っていた男に視線を移す。
その視線を受けた男は懐から水晶を取り出した。
「どうしても気になって調べてみたら、面白いものが映っていたのよ」
言いつつ麗玲が水晶を受け取るのと同時に何かを映し出す。
その映像は封魔が舞を牢から逃す場面と、聖奈と綾を連れて脱出する舞達を手助けしている場面で、横にいる封魔が舌打ちしたのがわかった。
「どう?これを見てもまだ惚けるつもりかしら?」
「残念ね。誤魔化しきれなくて。……さてと、私達に逆らった以上、どうなるかはわかっていて、こんなことをしたんだもの、……どうしてあげましょうか?」
「そうね。何がいいかしら?……目の前でかつての闘神達がバラバラに砕け散るのが見たい?それとも、その子の記憶を無理矢理こじ開けて壊れるところが見たい?」
「ああ。あなたが連れてきている連中もなかなか面白いから、私達に従うように細工してもいいわねぇ?」
「……やめろ。花音達には手を出すな」
目の笑っていない笑みを浮かべて言う二人に、封魔が低い声で言う。
「……ふふふ、ならまたあなたがなってくれるのかしら?私達の【人形】に」
「……っ……、わかっ……」
「待って!」
了承しようとしたのだろう封魔の声を花音は咄嗟に遮った。
「花音?」
「……駄目ですよ、封魔さんは。……きっと次はもう戻れない。……私があなた達に協力します。邪魔はしません。……それじゃあ、駄目ですか?」
そう言った花音を見て、麗玲と天奏は視線を交わす。
「……今回はそれでいいわ。……但し、次はないわよ」
「言っとくけど、私達に協力っていうことは私達の治療は勿論、向こうのことはどんな状態でも見捨てるってことよ。……わかってるわね?」
言われて花音は頷く。
「それじゃあ、早速行きましょうか」
それを確認した麗玲はどこか楽しそうに言った。
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