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第1部 再会と出会いの章

1
ピピピピッ
「…………」
鳴り響く目覚ましの音にゆっくりと身を起こす。
(六時……)
ぼんやりと時間を確認し動き出す。
身支度を整え、廊下へ出ると今日が休日の為かまだ静まり返っていた。
キッチンへ行き、慣れた手付きで朝食の準備を始める。
切った野菜をサラダとして盛り付け、卵を焼いていると誰かが起きてきたのか、足音が聞こえてくる。
入ってきたのは、自分の叔母に当たる女性だった。
「あ、おはようございます」
「…………」
挨拶したものの、チラリと視線を寄越されただけで返事は返ってこない。
それはいつものことだった為、気にするなと自分に言い聞かせていると、叔母から言葉が飛んできた。
「優奈!何、手を止めているんだい!早くしないと後の三人も起きてくるよ ! 」
「は、はい」
その言葉に我に返ると、止まりかけていた手を慌てて動かす。
叔母が言ったように一緒に住んでいる残りの三人が起きてくる頃には、何とか朝食の準備は整っていた。
「「おはよう、お母さん」」
「おはよう」
朝の挨拶をしながら入ってくる三人もまた優奈のことは見ない。
それも慣れていることだと、優奈は自分の朝食を持ち、自室へ行こうとして叔父に声を掛けられた。
「おい、今日も彼処へ行くからな。さっさと準備しろよ」
「……はい」
そう返して退室する。
その後ろからは楽しそうな声が聞こえてきて、優奈は其処から逃げるように階段を上がった。
2
朝の仕事を終え、優奈は叔父の家族と共にある施設を訪れていた。
【異世界研究所】と書かれた看板をぼんやりと見つめる。
「ほら、早く行くわよ」
そう急かされて、優奈は歩き出す。
叔父、叔母についていって数分、着いたのは何人もの研究員がいる部屋で、その一番奥に門のようなものがあった 。
「……また来たんですか? 」
溜息混じりにそんな声が聞こえ、視線を動かすと、白衣を着た男性が一人立っていた。
「何度来たって無理なものは無理なんです。少なくとも、この五年という短い時間では……」
「短い!?だったら、いつになると言うんだ!?もう五年だぞ! 」
「そう言われましてもね」
男性は困ったように頭をかいた。
「異世界と一言で言っても、幾多の世界がある。その中から一つの世界を探し出すのは簡単なことではないし、もし見つけ出せても……」
「なら、あの子は!?貴之はどうなるの!? 」
「そうだよ!お兄ちゃんを返して! 」
「そうだ!返せよ!! 」
叔母やその娘、息子の言葉を聞きながら優奈は門のような装置を見た。
「? 」
叔父達に連れてこられたのは初めてではない為、何度も見たことのあるものだったが、今日は違和感を感じる。
(何だろ?この感じ)
内心でそう呟いた時、研究員の一人が焦ったように声を上げた。
「所長! 」
「どうした!? 」
「ゲートが開きます!あの時と同じです! 」
その言葉に全員が門型の装置を見るのがわかる。
すると、門の中央が光り、向こう側を映し出す。
そうかと思うと、そこから何かが飛び出して来た。
「あ……」
それは黒い翼を生やした生物で、優奈達を舌舐めずりしながら見る。
「くそっ! 」
叔父のそんな声がして、優奈は強く腕を掴まれた。
「痛っ、叔父さん、痛いよ! 」
そう声を上げてもその力は弱まらない 。
「連れて行くなら此奴にしろ!此奴の家族がどうなったかは知らないが、お前が此奴を一人にしたんだ!家族のいる所へ連れていけ」
その言葉が通じたのかはわからない。
それでもその生物がニヤリと笑ったのが見え、こっちへ向かってくる。
それに合わせて、叔父に突き飛ばされ 、生物の長い爪の生えた手に捕まる。
優奈が覚えていられたのは其処までだった。
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