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第4章

1
聖羅と聖鈴の二人と出会い、神麗から話を聞いた翌日。
神蘭はいつも通りの訓練の後、光蘭、光鳳に話をする為に時間をもらっていた。
「それで話っていうのは?」
二人が事務的な仕事をする時に使っているのだろう部屋へ来たところで、光鳳が切り出してきた。
「……実は……」
神麗達から聞いた話を思い出し、神蘭は意を決すると口を開いた。
そのまま封魔の様子も思い出しつつ、自分の中で固まりつつある決意を話すことにした。
「……そう。闘神にね。……言っておくけど、そう簡単になれるものじゃないわよ」
「正直、今のお前の実力じゃ、歴代の闘神達の実力には到底及ばないぞ」
神蘭の話を聞いて、光蘭と光鳳がそう返してくる。
「それはわかってます。封魔の戦いを何度か見たことがありますから」
「……なら、わかるだろ?今のお前が闘神になると言っても、すぐにはなれない。最低でも十数年は掛かる。……こんなこと言いたくはないが、お前が闘神になる頃には封魔は既にいないだろう。いるのは、奴の姿をした只の兵器だ」
「それでもやってみなければわかりません。私がそれだけの力を手に入れられるのがもっと早ければ間に合うかもしれない。……それに、私以外にも何とかしようと動いてくれている人達もいる。その人達が時間を稼いでくれるかもしれない」
神蘭がそう返すと、光鳳と光蘭は何故か意外そうな表情を向けてきた。
「……何か?」
「……いえ、ただ今、軍人の殆どが封魔に反発してるって聞いていたから、そこまで助けようとしているのがちょっと意外だと思ってね」
「……確かに私も反発していましたし、今でも納得できていないこともあります。でも、私が何度も助けてもらったことも事実だし、あの状態がいいものだとは思えません。それである人から今の状況を変えるには、次の闘神が必要だと聞いて……」
「自分がなろうと思った……か」
光鳳に頷いてみせると、彼は光蘭と視線を交わし合い、真剣な表情で神蘭を見た。
「さっきから言っているように本当に簡単になれるものじゃないぞ。修行だって今までとは比べられないくらい厳しいものになる。それでもなるというのか……」
「……はい。それに私が闘神になろうと思ったのは、封魔を助けようと思ったことだけが理由ではありません」
「別の理由があるの?」
光蘭に聞かれて、神蘭は頷く。
「はい。……私がこんなことを言うのは少しおかしいかもしれませんけど、……封魔以外の闘神達が守ろうとしていたものを守りたいんです。このまま魔神族に怜羅様達が大切にしていたものを壊されたくない」
そう言って、神蘭は二人を見据えた。
「それが理由ではいけませんか?」
言うと、光鳳が溜め息をついた。
「……いや、わかった。だが、軍を任された以上、俺達がお前の修行に付き合うことはできない」
「そのかわり、私達や封魔達を鍛えてくれた人を紹介するわ。……但し、その人は厳しい方でね、修行をつけてもらうにはまずは気にいられないといけないの。もし気にいられて修行をつけてもらえることになったとしても、相当厳しいものになるし、途中で見限られる可能性もある。……それでもいいなら」
「……はい。お願いします」
神蘭が言うと、もう二人は諦めたように苦笑した。
2
光鳳、光蘭と話をしたあと、神蘭は自室で荷物を纏めていた。
「おねえちゃん、何処か行くの?」
そんな様子を見ていた由良が聞いてくる。
「……うん。明日から暫く留守にするね」
「私は?一緒に行っちゃ駄目?」
「……ごめんね。私が行こうとしている所は此処から遠いし、ちょっと危険な所だから連れて行くことはできないんだ」
「……そう、なんだ」
由良が少し寂しそうに、悲しそうに呟く。
それを見て、神蘭は少し慌てて続けた。
「あ、でもその間、由良のことを預かってくれる人はいるから、大丈夫だよ。私もちゃんと此処に帰ってくるから、ね?」
「……本当?」
「うん。どの位掛かるかはわからないし、いつ帰るとか約束は出来ないけど、必ず帰ってくるから。それまでは明日行く人のところで待ってて」
「……うん」
少し不安そうにしながらも頷いた由良に笑みを浮かべ、神蘭は止めていた手を再び動かし始めた。
「それじゃあ、お願いします」
次の日、荷物を持った神蘭が由良を連れて訪れたのは、光蘭の所だった。
「ええ。責任をもって預かるわ。……暫くの間、よろしくね、由良ちゃん」
「……よろしく、お願いします」
神蘭に返した後、光蘭は由良に視線を合わせて声をかける。
それに戸惑いながら返す由良を見ていると、光鳳が何かを差し出してきた。
「これを持っていけ」
「これは?」
「俺と光蘭からの推薦状になっている。もし会えたら渡せ。それがあれば、少しは話を聞いてくれるだろうからな」
「……ありがとうございます」
光鳳の言葉の中に気になることはあったが、とりあえず礼を言って受け取り、大切にしまった。
「それじゃあ、そろそろ行きますね」
「ああ」
「気をつけてね」
「お姉ちゃん、いってらっしゃい」
「いってきます」
最後に由良の頭を撫でると、神蘭は光鳳、光蘭に一礼して歩き始めた。
「……行ったわね」
「……ああ。……さてと、これからが少し大変かもな」
遠ざかっていく神蘭の姿を見ながら、光鳳と光蘭が呟く。
「……そうね。このことを知ったら、黙ってない子達もいるだろうし」
「でも、まぁ、仕方ないだろ。何れ誰かがならなければならないんだ。まして今のような……これから起きるような大きな戦いには必要だからな」
言いながら、何かを見据えるように光鳳は目を細めた。
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